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資料「日本共産党の原発政策の変遷」
〈注〉ページの最下段に解説「画竜点睛を欠いてはいないか――日本共産党の原発政策の変遷を概観しての、筆者(今田)の感想的意見」をつけました。
(経済ジャーナリスト・今田真人=2012年10月22日初稿、何回かの改定後の11月8日に確定)
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☆「日本共産党綱領」(1985年11月24日、同党第17回大会で「一部改正」)
「党は、原子力の軍事利用に反対し、自主・民主・公開の原子力平和利用三原則の厳守、安全優先の立場から原子力開発政策の根本的転換とその民主的規制を要求する」(『前衛』1986年1月臨時増刊「日本共産党第17回大会特集」P148)
〈注〉この原子力の利用についての記述は、第17回大会で初めて盛り込まれた。なお、第8回大会(綱領確定)から第16回大会までの綱領には、原子力の利用についての記述はいっさい見あたらない。
☆『原発推進政策を転換せよ』(日本共産党中央委員会出版局1988年7月1日初版発行)
「日本共産党綱領から――党は、原子力の軍事利用に反対し、自主・民主・公開の原子力平和利用三原則の厳守、安全優先の立場から原子力開発政策の根本的転換とその民主的規制を要求する」(同書P7)
「…『核絶対否定』の立場の誤り――原子力の軍事利用に反対し、安全性を無視した原子力の利用に反対するのは当然のことですが、ここで重要な問題は、『原水禁』などのように、原水爆禁止運動の中心的課題である核兵器廃絶にたいして、『核対人類』論などを持ち出し、『反原発』『核絶対否定』を正面に掲げ、事実上、核兵器廃絶を後景に追いやり、究極目標にしようとしていることです。
…また、一部環境保護(エコロジー)グループは、『反核・反原発・エコロジー』を主張して、「『反原発』としての『反核』」とか、「『反基地』『反安保』としての『反核』」とかいい、核兵器廃絶に、『反原発』『反基地』『反安保』を対置する分裂路線を持ち込んでいます。
この動きが、科学技術の進歩を敵視する反科学主義の立場にたつ誤りであることは明白です。これらの動きは、まだ大きな流れとはいえないまでも、原水爆禁止運動にとっては、まさに分裂と混乱を持ち込むものであり、原子力の軍事利用、安全無視の原発開発に反対する運動の正しい発展のためには、とくに注意を払う必要があります。
いわゆる社会党・総評系の『原水禁』は、今回の広島での『世界大会』をせん称した集会でも、核兵器廃絶と『反原発』を同列においた『核絶対否定』の立場を強調しています。また、その立場から、『第1回核被害者世界大会』(9月26日〜10月3日、ニューヨーク)を「呼びかけ人」方式で準備しています。ここに社会党の大きな内部矛盾、行きづまりがあります」
(同書P60〜61。1987年9月2日に行われた「『安全神話』くずれるなかでの原発問題への対処、住民運動の強化ーー原子力施設所在地関係道府県・地区委員会担当者会議にたいする党中央の報告〈党幹部会副委員長、科学技術局長 高原晋一〉」からの引用)
「核兵器廃絶して、国際的英知を集めた研究開発の推進ーー原子力の平和利用の道は、その端緒が開かれたばかりのところです。原子力の医学・医療への利用はいうに及ばず、エネルギー利用の可能性の追及も、いちおう行われています。
たとえば、スウェーデンの『PIUS』炉など、構造的に安全といわれる炉の開発研究がすすめられていますが、本格的なものとはなっていません。
世界的な、原子力の軍事利用優先の開発体制が、その平和利用の発展の可能性の芽を大きく損なっています。
核兵器を廃絶して、世界的に原子力の軍事優先の開発体制を根本的に改めることは、原子力の平和利用の全面的発展にとって、不可欠の条件です。
一刻も早く核兵器を廃絶し、国際的に英知を集めて、安全炉や放射性物質の無毒化など本格的な研究開発をすすめなくてはなりません」
(同書P67〜68。同上の党中央の報告からの引用)
「既設原発にたいする運動 しかし、一方、原発が建設されたからといって、住民運動をやめるわけにはいきません。
そのさい、とくに注意すべきことは、世界で唯一の被爆国の国民としての感情から、さきにのべた『反原発』を掲げる運動に心情的に同調する可能性が少なくないことです。
…すなわち、力足らず建設を許したからといっても、取り組むべき課題は多くあります。
…既設原発では、効果的な総点検を実施させるとともに、その結果にもとづいて、運転中止、出力低下などの安全規制を行わせるようにする必要があります。
…社会党や総評などの県段階、地区段階の『反原発』グループやニセ『左翼』暴力集団などは、極左的な戦術で『反原発』を示威し、住民運動を国民的運動から切り離す役割を果たしています」
(同書P79〜81。同上の党中央の報告からの引用)
「わが党は、科学的根拠にもとづいて、未成熟な原発建設はもちろんのこと、その運転については多くの危険性をもっているということを一貫して指摘してきました。
しかし、一部には、『原発絶対反対』をとなえながら、核兵器廃絶を後景においやり、あるいは反共のために原発反対を利用するものもあります。
最近、『読売』では、後出の著書が良く売れているためか、いわゆるマスコミのいう『げんぱつ現象』の『火つけ役』に広瀬隆氏の名があげられています。
『朝日』には『全国の住民運動グループの機関紙的役割』としての『草の根通信』の松下竜一氏の名がみられます。
そこでは、『原発の危険性』という重大な問題をとりあげながら、原子力の平和利用のいっさいを否定する立場から、『核兵器より原発が危険』とか、『すでに原発のなかで核戦争が始まっている』といった誇張した議論で、核兵器廃絶の重大性から目をそむけさせたり、原発立地反対闘争などの正当性をかえって失わせるような傾向がみられます。
…いま、注意しなければならないイデオロギーの中心は、先にその誤りの二、三の特徴を明らかにした原子力のいっさいの平和利用を否定する『核絶対否定』論や『原発絶対』反対論です。
組織的な中心には、総評・社会党が指導する『原水禁』グループや反共ニセ『左翼』暴力集団、反党盲従分子、『草の根通信』の松下竜一氏などの集団がいます。
この人たちは、放射能汚染の危険性や原発の危険性を考えている善意の婦人層を中心にした市民をねらって、後ろから扇動している場合が少なくありません。
それは、党機関や議員に送られてくるアンケートの中身が、たとえば必ず浜岡原発の最近の事故をチェルノブイリ事故寸前としてとりあげるなどの共通性があることにもしめされているのではないでしょうか。
こうした策動は、核兵器廃絶の闘争を原発問題にそらし、原発反対闘争では分裂と混乱をもたらすものとなる点を見ておくことです。
いま大切なことは、非科学的な不安をあおることではなく、原発の危険性を心配している婦人層や市民の要求にこたえて、広範な人が結集する行動をすすめていくことです。
…『自主・民主・公開』の原子力利用三原則の厳守とともに、すでに大きな成果をあげている原子力の医学・医療への利用をはじめ、将来の安全で安定したエネルギー総合政策をめざして、科学者、技術者、国民の統一した力の発揮がいまこそ求められています。わが党は、その先頭に立って奮闘するものです」
(同書P98〜115。「無責任な原発推進政策への反対闘争を正しく発展させるために 鶴尾功党科学技術局次長」〔「赤旗」評論特集版1988年5月23日号〕からの引用)
☆『原発問題と原子力の将来』(日本共産党中央委員会出版局1988年11月20日初版発行)
「軍事利用を絶つことが真の平和利用の道ーー原子力発電の問題を考えるうえで、核エネルギーの平和利用をどうみるかということがあります。この点をどうお考えでしょうか。
中島 原子力エネルギーの利用をどう考えるかについて私がとる態度の基本は、核エネルギーというものが今世紀になってから発展した物理学の成果である、人類の英知の所産であるという考えにたっていることにあります。
ところが、同時にこの英知の所産が最初に核兵器に使われ、それがいまだに廃絶されていないという世界の現実をも正確にみなければならない。
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