はじめに
コードレビュー、やってますか?
どの現場でも日常的に行われている開発プロセスのひとつですが、
「レビューで何を見ればいいのか分からない」
「細かいことばかり指摘されてつらい」
「LGTMだけで終わらせてしまう」
──そんな悩み、あるあるですよね。
本記事では、エンジニアなら一度はやってしまう“NGレビュー”を13パターン紹介しながら、
それぞれにどう改善すればよいか、実際のPRを例にBefore / After形式で学べる構成にしています。
👥 対象読者
• コードレビューに慣れていない若手・中堅エンジニア
• 「レビューがつらい」「空気が悪くなるのが不安」という方
• チーム全体でレビュー品質を高めたいと思っている方
「コードを良くする」のはもちろん、チームの雰囲気も良くなるレビューを、一緒に考えていきましょう!
弊社Nucoでは、他にも様々なお役立ち記事を公開しています。よかったら、Organizationのページも覗いてみてください。
また、Nucoでは一緒に働く仲間も募集しています!興味をお持ちいただける方は、こちらまで。
PRとレビューの前提
本記事では、「ありがちだけどちょっともったいないレビュー」をNGパターンとして紹介します。
そしてそれに対して、実際にありそうなPR(プルリクエスト)を題材に、コメントのBefore / Afterを並べて比較することで、
「なにが悪くて、どう改善できるか」を視覚的に理解できるように構成しています。
レビュー例には以下のような前提があります:
• フロントエンド or バックエンドのWeb系プロジェクト(特定技術に依存しない内容)
• 社内のチーム開発で、GitHubベースのレビュー文化
• 仕様や設計の方針はある程度共有されている状態
コメントでは「NG」と「OK」を明確に分けて表示しているので、
「良い例だけ拾いたい!」という方もサクッと読み進められるはずです。
次の章から、「つい、やりがち…」なNGレビューとその改善例をどんどん見ていきます!
1. 全体を見ずに「ここだけ」指摘してしまう
全体をざっと確認せず、変更箇所の一部だけに注目してしまうレビューはありがちです。その結果、背景や目的が見えず、修正が狭く浅くなってしまいがち。以下のようなNGコメントには要注意です。
NG:
// reviewer:
ここのメソッドだけ直して
「ここだけ直して」と一言で片づけてしまうと、どこをどう直すかが不明確で、レビュイーは再質問や修正漏れに戸惑います。
このレビューパターンは、PRの本質—「この変更はどういう目的で、どこにどう効いているか」を見失いがちです。文脈を無視するとミスの見逃しにつながることも多くなってしまいます。
では、どうすれば良いのでしょうか?
OK:
// reviewer:
PR全体を読んだところ、主な変更は○○のためのロジック追加で、その前提に沿うとこのメソッドのこの部分が影響ありそうです。
この処理はこういう目的でしょうか?
→ 目的に沿った改善を一緒に考えられるコメント例
まずPR全体を通読し、「何を」「なぜ」「どう作用するか」を把握してから細部に入るようにすることで、より建設的で漏れのないレビューが可能になります。
✅ 章まとめ
- まずは全体を読むことがレビューの第一歩。変更の背景や目的を踏まえることで、指摘の質と意義が格段に向上します。
- 「ここだけ」指摘だと迷いやミスにつながるので、→「なぜ影響があるか」を一文で示すことを意識しましょう。
2. 背景が分からず「仕様を知らずに批判」
レビュー中に「このコード、なんか変じゃない?」と感じたこと、ありますよね。
でもその“違和感”、もしかしたら実は仕様通りだったり、他の制約のもとで妥当だったというケースも少なくありません。
つまり、背景や目的を知らずに突っ込むと、的外れなレビューになってしまうことがあるんです。
NG:
// reviewer:
なんでこんなロジックにしたんですか?
一見、自然な疑問に見えますが、これはレビュイーにとって「えっ、ちゃんと仕様書見てくれてますか?」と感じさせる恐れがあります。
こういうコメントが積み重なると、レビュイーは「もう何も言われたくないな…」と心理的に閉じてしまいがちです。
コードの背景には、プロダクト仕様、過去のバグ、外部サービスの制約、ユーザー要望など、さまざまな理由があるものです。
そのため、まずは「なぜこう書いたのか?」を確認する姿勢がとても大事です。
OK:
// reviewer:
これは○○の仕様に関連した処理でしょうか?目的が知りたいです。
過去PR(#123)にも似た処理があったので気になりました。
こういったコメントなら、「理解しようとしてくれている」と伝わりますし、必要に応じてレビュイー側も仕様の説明やコードへのコメント追加がしやすくなります。
✅ 章まとめ
- コードの背後には、仕様や制約、意図が隠れていることを忘れずに。
- 「なんでこう書いたの?」ではなく、「こういう理由ですか?」と仮説ベースで聞くのがコツです。
3. エラーや境界値を無視して「見た目だけOK」
レビューをしていて、「まあ一通り動いてそうだし、OKでいいかな」と判断してしまうこと、ありませんか?
でもその“動いてそう”って、本当に全部のパターンで動く保証はあるんでしょうか?
NG:
// reviewer:
ざっと見た感じ問題なさそうですね!LGTMです!
一見、ポジティブなコメントに見えますが、レビューの目的は「安心してマージできるかどうか」を見極めること。
それなのに、テストの有無や境界値の考慮をスルーしてしまうと、あとで「このケース落ちてますけど…」と事故につながりかねません。
特に、ユーザーの入力や外部APIレスポンスなど想定外の値や境界値(空文字、null、最大長など)に対するテストは見落とされがちです。
OK:
// reviewer:
全体的に良いと思いました!
ただ、X=0や空文字のケースは考慮されていますか?
意図的ならコメント補足があると助かります。必要ならテスト追加も検討お願いします。
こんなふうに「考慮されているか?」をやんわり聞くだけで、レビュイーの意識にも火がつき、安心してマージできるようになります。
✅ 章まとめ
- 動作が“なんとなく大丈夫そう”でも、境界値・異常系のチェックは必須。
- 「このパターン、試してみましたか?」という一言で、事故はグッと減ります。
- 特にnull・空文字・0・上限超え・例外パスあたりは常に目を光らせたいところです。
4. 速度や負荷を考えず「ただ速くレビュー」
忙しいときほど、ついレビューも「サッと見て終わらせたい」という気持ちになってしまいますよね。
でもその“サッと見”で、処理の重さやパフォーマンスの落とし穴を見逃してしまうと、あとで本番環境で大きな問題になりかねません。
NG:
// reviewer:
ぱっと見、大丈夫そうですね!このままで良さそうです。
一見「前向き」なレビューに見えますが、複雑なループやDBアクセスが重複しているコードなどを見落としてしまうと、
「動くけど重い」「なぜか大量データでタイムアウトする」などのトラブルに直結します。
実際、パフォーマンスの課題はコードが正しく動くことだけでは発見できない領域です。
たとえばループ内で毎回検索していたり、同じ計算を何度も繰り返していたり、何気ない処理が全体の処理時間に影響を及ぼすことも。
OK:
// reviewer:
ロジックは理解しました!
ただ、この部分はデータ量が多くなると O(n²) になりそうです。
Setを使うか、事前にキャッシュして処理できないか一度検討してみてください。
このように「ボトルネックになりそうな部分を一緒に考える」という姿勢が、パフォーマンス改善への第一歩になります。
✅ 章まとめ
- “動けばOK”から“速くて安定して動く”へ意識を切り替えるのが重要。
- 少しの処理改善が、将来的なボトルネックの回避やユーザー体験の向上につながる。
- O(n²)、DBアクセスの回数、キャッシュの有無など、レビューでも最低限のパフォーマンス観点は押さえておこう!
5. 例外処理を後回しにして「エラー面をスルー」
「とりあえず動いてるし、エラーにはならなそう」
──そんな理由で例外処理を後回しにしたこと、ありませんか?
でも本番で落ちるのは、たいてい「ならなそうなエラー」なんです。
NG:
// reviewer:
まあこのケースで失敗はしなさそうですよね。とりあえずOKです。
このように、例外が「起きなさそうだから」と判断してスルーしてしまうと、
実際にAPIが落ちたとき、想定外の値が入ったとき、ユーザーに真っ白な画面だけが残る…という悲劇に直結します。
特に、レビュー対象が外部APIの呼び出しやファイル処理、DBアクセスなどを含む場合は要注意。
「エラーが起きる前提で設計されているか?」をチェックする姿勢が大切です。
OK:
// reviewer:
このAPI呼び出しが失敗した場合のハンドリングはどうなっていますか?
try-catch で包んでログ出力 or フォールバック処理があると安心です!
コメントが優しくても、指摘の本質は「ユーザーに優しい設計になっているか」。
レビュイーにも伝わりやすく、行動に移しやすくなります。
✅ 章まとめ
- エラーは“起きるもの”として見るのがレビューの基本姿勢。
- 「try-catchされてる?」「失敗しても壊れない?」を最低限チェック。
- 特に外部通信・I/O・非同期処理はエラーハンドリングの抜けがちポイント!
6. 名前がわかりにくくて「これ名前変じゃない?」
コードレビュー中に「うーん、この名前ちょっと分かりにくいな…」と思った経験、ありますよね。
でもそこで終わってしまうと、レビュイーからすれば「何がダメなの?」と戸惑ってしまうだけ。
NG:
// reviewer:
これ名前変じゃない?
意見としては間違っていないのですが、“変かどうか”は主観的になりやすく、受け取り方も人によって大きく異なります。
しかも指摘だけして改善案がないと、「で、どうすれば…?」と困ってしまいます。
名前はコードの読みやすさに直結する重要な要素。だからこそ、「何が分かりにくいか」「どう変えると良くなるか」まで伝えることが効果的です。
OK:
// reviewer:
この `a` って変数、値としてはユーザーIDのリストみたいですね。
`userIdsList` のように役割が分かる名前だと読みやすくなりそうです!
たったそれだけで、レビュイーも「ああ、なるほど!」「じゃあリネームしておこう」と前向きに受け取れます。
“提案”の形にすることでレビューがただの指摘から「対話」に変わるんですね。
✅ 章まとめ
- 命名は「なんとなく変」ではなく、“何がどう読みづらいか”を伝えるのが大事。
- ベターな案が浮かばなくても「○○っぽく見えました」と伝えるだけで十分。
- レビューは“あら探し”ではなく“言葉の選び直し”という視点が◎。
7. スタイルばかりに気を取られる「余計な揚げ足」
コードレビューでつい目についてしまう「スペース1個のズレ」や「全角スペースの混入」…
確かに気になりますが、そこばかりに集中してしまうと、本当に見るべき中身が見えなくなることも。
NG:
// reviewer:
インデントずれてます。
ここ、全角スペース入ってますよ。
この空行いらないかも。
このようなスタイルばかりの指摘が続くと、レビュイーは「見た目のことしか言ってこないな」と感じてしまい、
本質的な議論が生まれにくくなってしまいます。
もちろん、読みやすいコードは大事です。でもそれなら、機械に任せられるところは任せて、もっと価値のあるレビューに時間を使うべきです。
OK:
// reviewer:
スタイルはESLintに任せて、CIで自動チェックできると良いですね。
その分レビューではロジックや設計に集中できるので、導入もおすすめです!
このように、「指摘 → 仕組み化 → 本質に集中」という流れに持っていくことで、
レビュアーもレビュイーもストレスが減り、生産的なやりとりができます。
✅ 章まとめ
- スタイル指摘は悪ではないが、レビューの本筋ではない。
- 自動化ツール(ESLint, Prettier など)で人力の負担を減らす工夫をしよう。
- 「どこに集中すべきか」をチームで明確にすることがレビュー文化を整える第一歩。
8. 設計視点を忘れて「構造がおかしい」で終わり
レビュー中に「うーん、このコード、なんか読みにくいな…」「関数長すぎない?」と感じること、よくありますよね。
でも、その感覚を「なんか長いね」だけで終わらせてしまうと、レビューとしては非常に惜しいんです。
NG:
// reviewer:
この関数、なんか長くない?
構造ちょっとおかしい気がする。
こうした漠然としたコメントは、レビュイーにとっても「じゃあ何をどうすればいいの?」となってしまいます。
本当に伝えたいのは、“どう直すと良くなるか”のはず。
設計や構造に関するレビューは、レビュアーの視座の高さが問われるポイントでもあります。
だからこそ、たとえ完璧でなくても「こうすれば良くなるのでは?」という仮説を添えることが大切です。
OK:
// reviewer:
この関数、3つの処理が1つにまとまっていて少し複雑ですね。
Strategyパターンで処理ごとに分けると、テストや保守がしやすくなるかもしれません。
具体的なリファクタの方向性やデザインパターンを提案することで、レビュイーも視野が広がり、設計を学ぶきっかけにもなります。
✅ 章まとめ
- 「構造が微妙」と感じたら、“なぜそう感じたか”を言語化することが大事。
- 設計改善のアイデア(関数分割、責任の分離、デザインパターンなど)を提案ベースで伝えると、レビューが建設的になる。
- 完璧じゃなくても「仮説」として出すだけで、チームの設計力が底上げされるレビューになる!
9. 重複コードをスルーして「前も似たコードあった気が…」
「この処理、どこかで見たような…」
そう思っても、忙しかったり面倒だったりして、ついスルーしてしまうこと、ありませんか?
でもその“なんとなく放置”、あとで保守地獄の第一歩になることもあるんです。
NG:
// reviewer:
(あれ?この処理、前も見たような…まいっか)
重複コードを放置すると、将来的にどこを直せばいいか分からない・一部だけ直してバグになるといった事態に発展しがちです。
「このあたり、共通化できそう」と思ったなら、ひと言伝えておくのがレビューの責任でもあります。
コードの共通化は、可読性・テスト性・保守性すべてにおいてプラスです。
たとえ確信がなくても、「似た処理、他でも見た気がします」とふんわり投げかけるだけでも意味があります。
OK:
// reviewer:
このロジック、以前の `userService.ts` にも似たような処理があった気がします。
共通化すれば再利用しやすくなりそうです!
このように具体的なファイル名や処理名を添えると、レビュイーも気付きやすく、素直に対応できます。
指摘ではなく“提案”として出すと、レビューが押し付けに見えずスムーズです。
✅ 章まとめ
- 「前もあったような…」で終わらず、再利用のきっかけを作るのが良いレビュー。
- 共通化は後回しにされがちだからこそ、レビューのタイミングが一番言いやすい。
- 確信がなくても「似てる気がする」レベルでOK。ふんわり指摘でも価値あり!
10. テスト・ドキュメントを見落として「動いてる=OK」
「コードもきれいだし、動いてるっぽいからマージで!」
──ちょっと待ってください、それ本当に安心して使える状態ですか?
NG:
// reviewer:
とくにエラーも出ないし、マージして良さそうです!
見た目や動作に問題がなくても、テストが未整備だったり、使い方が書かれていなかったりすると、他のメンバーが使えない・壊してしまうリスクがあります。
特にライブラリ化されたユーティリティや共通関数などは要注意です。
レビューは「動くかどうか」だけでなく、「他の人が安心して使えるかどうか」を見る場でもあります。
だからこそ、READMEやJSDoc、単体テストの有無はしっかり確認したいポイントです。
OK:
// reviewer:
処理内容は良さそうですね!
この関数を他のメンバーが使う可能性もあるので、READMEに使用例を追記してもらえると助かります。
合わせて、unitテストも追加できそうでしょうか?
このように「自分以外の誰かが使うこと」を前提にしたコメントは、チーム全体の開発体験を底上げするレビューにつながります。
✅ 章まとめ
- 「動いている」だけではレビュー完了ではない!
- 他の人が使えるように、使い方説明(READMEやJSDoc)とテストがあるかチェック。
- レビューはコードの“未来の利用者”への気配りでもある。
11. 修正提案だけで「なぜ直すの?」が抜けている
GitHubやGitLabのレビュー機能で便利な「suggested change」。
とても使いやすい反面、“意図を伝えないまま変更だけを投げる”というレビューになってしまいがちです。
NG:
return result.filter(x => x.active);
// reviewer:
(※コメントなし)
これ、見た目は丁寧な提案に見えますが、レビュイーからすると「なぜそれに変える必要があるのか」が分かりません。
「もしかして怒られてる…?」「好みの問題では?」といった不安や疑念を生んでしまうこともあります。
修正提案は、“コードを良くする手段”ですが、伝え方を間違えると単なる“押しつけ”に見えてしまいます。
そこで重要なのが、「なぜそう直すのか」という背景や目的の補足です。
OK:
return result.filter(x => x.active);
// reviewer:
※activeがfalseの要素は不要だと思うので、filterで除外する形にしてみました。
この方が条件が明確になり、読みやすいかと思います!
このように具体的なファイル名や処理名を添えると、レビュイーも気付きやすく、素直に対応できます。
指摘ではなく“提案”として出すと、レビューが押し付けに見えずスムーズです。
✅ 章まとめ
- 「前もあったような…」で終わらず、再利用のきっかけを作るのが良いレビュー。
- 共通化は後回しにされがちだからこそ、レビューのタイミングが一番言いやすい。
- 確信がなくても「似てる気がする」レベルでOK。ふんわり指摘でも価値あり!
12. レビューを先延ばしにして「放置レビュー」
「ちょっと今立て込んでるから、あとで見よう…」
──その“あとで”、本当に来てますか?
忙しいときほどレビュー対応が後回しになりがちですが、
レビューが止まると、開発の流れも止まってしまいます。
NG:
// reviewer:
(3日前にレビュー依頼されてたけど…まだ見てない…)
放置された側は、「まだかな…?」「気に障った?」とモヤモヤ。
レビューに着手されないまま日数だけが過ぎると、信頼やチームのリズムにも影響します。
もちろん、人間だから忙しいときもあります。
でもそんなときは、“すぐ見れないことを伝える”だけでも全然違うんです。
OK:
// reviewer:
ごめんなさい、今詰まっていて今日中の確認になります🙏
明日までにはコメント出します!
こうした小さな一言のコミュニケーションが、チームの雰囲気や進捗の透明性を大きく左右します。
レビューも仕事のひとつ。だからこそ、レビューを“返す責任”も意識しておきたいですね。
✅ 章まとめ
- 放置されたレビューは、技術的にも心理的にも負債になる。
- 忙しくて見れないときは、状況を一言共有するだけでもOK!
- 「期限感」と「ひとこと連絡」が、レビューの信頼感を支えるポイントです。
13. LGTMで終わらせて「コメントしない放置」
「特に問題なさそうだし…LGTM(Looks Good To Me)で!」
──その一言、便利だけど、もったいないかもしれません。
NG:
// reviewer:
LGTM 👍
もちろん、LGTM自体が悪いわけではありません。
でも「何が良かったのか」「どこを見たうえでOKと判断したのか」が書かれていないと、レビュイーには何も伝わらないんです。
最悪、「ちゃんと見てくれたのかな?」という不信につながることも。
一方で、「ここが良かったです」と一言添えるだけで、
レビュイーの安心感やスキルアップにつながる“前向きなフィードバック”に変わります。
OK:
// reviewer:
LGTMです!特にエラーハンドリングと命名が丁寧で読みやすかったです!
たった1文でも、見た・理解した・評価したという姿勢が伝われば、
「ちゃんと見てもらえた」という安心感が生まれ、チームとしての信頼関係も強まります。
✅ 章まとめ
- LGTMだけでは“見たフリ”に見えてしまうことも。
- OKなら「どこが良かったのか」「どこを確認したか」をポジティブに伝えると◎。
- レビューはチェックだけでなく、“承認のコミュニケーション”でもある。
NGパターンまとめと対応策
ここまで紹介してきた「レビューでありがちなNG例」、
思い当たるものが1つや2つはあったのではないでしょうか?
ここでは、それぞれのNGパターンに対して、
どのような「声かけ」や「コメントの型」にすると建設的なレビューになるのかをテンプレ形式で整理します。
NG → OKテンプレート集
NGパターン | ダメな例 | 改善テンプレート(使える言い回し) |
---|---|---|
全体を見ずに細部だけ指摘 | 「ここだけ直して」 | 「まず全体として〇〇な方針で良さそうですね。その上で、この部分は△△にするともっと良くなると思いました」 |
文脈を無視して批判 | 「なんでこんなコード?」 | 「この実装の背景が気になりました。〇〇のような理由があるのでしょうか?」 |
テスト考慮なし | 「動いてるからOK」 | 「〇〇のケースも通るか確認したいです。テスト追加をご検討いただけますか?」 |
性能を無視 | 「大丈夫そう?」 | 「この処理、O(n²)なので、データ量が増えると負荷が心配です。Set化やキャッシュの検討も良さそうです」 |
エラー対応を無視 | 「失敗しなさそう?」 | 「この部分、例外が起きると処理が止まりそうです。try-catchやフォールバック処理を入れられそうでしょうか?」 |
名前が不明瞭 | 「名前変じゃない?」 | 「この変数名、userIdsList などにすると用途がより明確になるかと思いました」 |
スタイル偏重 | 「インデントずれてます」 | 「スタイル系の修正はESLint等で自動化しませんか?その分レビューでは設計に集中できるので」 |
設計に触れない | 「なんか構造変」 | 「この部分、Strategyパターンなどで処理を分けると、読みやすさとテスト性が上がりそうです」 |
重複コードを放置 | (ノーコメント) | 「この処理、他ファイルにも似たものがあります。共通化すると保守しやすそうです」 |
テスト・ドキュメント未確認 | 「OKっぽい」 | 「使い方が他のメンバーに伝わるよう、READMEへの使用例追加をお願いできますか?」 |
意図を説明しない提案 | suggestedのみ | 「〇〇の観点で改善されると思い、こういった修正案を提案してみました」 |
レビュー放置 | (3日以上無反応) | 「今手が離せないので、明日までには確認&コメント返しますね!」 |
LGTMだけ | 「LGTM」 | 「LGTMです!特に〇〇の処理が簡潔で分かりやすかったです」 |
💡 ワンポイント
• どんなNGも、「提案」と「共感」を添えることで“対話”に変わる
• レビューは“文句を言う場”ではなく、“チームの知見を共有する場”
• テンプレに頼るのは最初だけでOK。使ううちに自分のレビュー言語が育つ
良いレビューを書く心得13か条
ここまでNGパターンとその改善策を見てきましたが、実際の現場では「じゃあ結局どう意識すればいいの?」という声が聞こえてきそうです。
そこで、良いコードレビューのマインドセットを「心得13か条」としてまとめました。
NG例と対になる形で、レビューの本質を端的に押さえています。
✅ 良いレビューの心得
1. まず全体を見る。細部に行くのはそのあと。
2. コードの背景や文脈を確認してからコメントする。
3. テストの有無・観点を常に意識する。
4. パフォーマンスへの影響も視野に入れる。
5. 例外系やエラーハンドリングを後回しにしない。
6. 命名は“未来の自分”が見て分かるように。
7. スタイル指摘は自動化できる環境を整える。
8. 構造・設計についても踏み込む勇気を持つ。
9. 似たコードがないか、過去の実装を思い出す。
10. 使い方とテストの“伝わる状態”をゴールとする。
11. 提案には「なぜ」を添えて納得感を生む。
12. レビューを放置せず、ひとことリアクションを。
13. OKコメントにも「どこが良かったか」を伝える。
すべてを完璧にやる必要はありませんが、どれか1つを意識するだけでもレビューの印象はガラッと変わります。
「コードを良くする」ことはもちろん、人と人のコミュニケーションとしてのレビューを大切にしましょう。
仕組みでレビュー品質をアップ
良いレビューの意識があっても、チームやプロジェクト全体で習慣化するのは難しいものです。
だからこそ、「仕組み」でレビュー品質を底上げするのが効果的です。
ここでは、すぐ導入できる3つの工夫をご紹介します。
📝 1. PRテンプレートで「書くことを明確に」
PRに以下のようなテンプレートを用意しておくと、レビュアーが背景を把握しやすくなります。
-
変更内容の概要
なにをどう変えたのかを簡潔に -
背景・目的
なぜこの変更が必要だったのか -
レビューポイント
特に見てほしい部分(性能・設計・仕様など) -
補足
動作確認内容やテスト状況など
こうした情報が整理されているだけで、「見逃し」や「的外れな指摘」も減ります。
✅ 2. レビュー用チェックリストを用意する
レビュー時に確認すべきポイントを簡単なチェックリストにしておくと、誰でも一定品質のレビューができます。
例:
- ロジックの意図が分かるか?
- エラーハンドリングは十分か?
- 命名は適切か?
- テストケースは十分か?
- 処理の重複や再利用できそうな部分はないか?
これはレビュー初心者のフォローにもなるので、ナレッジ共有としても効果的です。
⚙️ 3. 自動化ツールで指摘コストを減らす
- スタイルチェック: ESLint, Prettier
- テスト自動実行: GitHub Actions, CircleCI
- suggested change: GitHubのインライン提案機能
これらをCIに組み込むことで、「人間が見なくてもいい部分」は機械に任せられます。
結果として、レビューの“本質”に集中できる時間が増え、議論の質が高まります。
レビューの品質は、個人のスキル×チームの文化×仕組みのサポートで決まります。
「仕組み」としてのPRテンプレやチェックリスト、自動化の導入を進めることで、
属人化せず、誰でも“良いレビューができる状態”を目指しましょう!
まとめ
ここまで、コードレビューでありがちなNGパターン13選とその改善方法、
さらに、良いレビューのためのマインドセットと仕組み作りのコツを紹介してきました。
レビューは「正しいかどうか」だけを判断するものではありません。
それ以上に、チームの認識をそろえたり、知識を共有したり、開発文化を育てたりするための大事なコミュニケーションの場です。
✅ 今すぐできるアクションリスト
- PRを出す前に、「背景・目的・レビューポイント」を明記しよう
- コメントするときは、「なぜ」を添えて伝えるクセをつけよう
- LGTMだけで済ませず、良かった点を1つでも挙げてみよう
- チームでレビューのチェックリストを作ってみよう
- ESLintやCIなど、自動化できることは機械に任せよう
📣 最後に
「コードレビューがつらい」「緊張する」「何を言えばいいか分からない」
そんな経験は誰にでもあります。でもそれは、ちゃんと向き合っている証拠です。
本記事が、レビューのモヤモヤやストレスを少しでも減らし、
「レビューって、ちょっと楽しいかも」と思えるきっかけになれば幸いです。
あなたのレビューが、チームの開発をもっと良くしていくことを願っています!
弊社Nucoでは、他にも様々なお役立ち記事を公開しています。よかったら、Organizationのページも覗いてみてください。
また、Nucoでは一緒に働く仲間も募集しています!興味をお持ちいただける方は、こちらまで。