私(安岡孝一)がQiitaで公開した「JavaScriptによるPC-8001エミュレータ」(5月21日・23日・24日・25日・29日・30日・6月2日・3日・5日・6日・12日・14日・17日・18日・23日・24日・27日・28日・29日・7月3日の記事参照)を https://github.com/KoichiYasuoka でも公開すべきだ、との御意見をいただいた。残念だが、GitHubでの公開は難しい、というのが、現時点(というか5月21日時点)での私の判断だ。このあたり、5月29日の記事で書いた
『SIGNAL ALIEN』は、PC-8001の40×25キャラクタモードで動いており、SVGでエミュレートするには、8×8ドットフォントを「目作業」で作成する必要があった。しかも、N-BASICのルーチンのうち
- 0018 1文字出力(メッセージ出力用)
- 093A 画面幅設定
- 1602 時計読み込み(ランダムのモト)
- 52ED 文字列出力
を独自実装する必要があったため、かなり作業が難航した。
を例に、ちょっとだけ議論してみよう。
Qiitaの利用規約によれば、Qiitaの記事は、基本的に日本の著作権法にしたがう。日本の著作権法でPC-8001のN-BASICと言えば、何をさておき東京地裁昭和57年(ワ)14001号(1987年1月30日判決)であり、この判決において、N-BASICの各ルーチンは「思想」を表現した著作物である。とすると、私が実装した上記4つのルーチンも、独自実装ではあるものの、対応するN-BASICルーチンと同一の「思想」を表現しており、二次著作物にあたる可能性がある。二次著作物だとするなら、原著作物の権利を、どの程度侵害しているかが問題となる。ならば、私の戦略としては「JavaScriptによるPC-8001エミュレータ」を単一著作物(複数ファイルに分けない)の形にして、全体をQiitaの記事で公開することで、不要なルーチン等を実装していないことを示した上に、それでも戦うなら日本の著作権法(つまり日本国内の裁判所)という意思を表示したことになる。
一方、GitHubがしたがうのは、アメリカの著作権法(Digital Millennium Copyright Act)であり、判断の枠組が全く異なる。何せ、キャラクタデザインすら著作権法で保護されるので、極端な話、PC-8001の8×8ドットキャラクタすら訴訟の対象となりうる。もちろん私の方としては「Fair Use」で戦うことになるが、少々ブが悪い上に、アメリカの連邦裁判所まで行かねばならない。しかも、アメリカの著作権は、職務著作に関しては95年なので、日本の著作権より25年も長くてツライ。
というあたりを勘案して、「JavaScriptによるPC-8001エミュレータ」をQiitaで全文公開する、という戦略に落ち着いたわけである。ただ、それでもarchive.orgに『SIGNAL ALIEN』『FEDORA』『4次元迷路』『ΡΟΠΗ』が収録されてしまったので、さて、このあたりの著作権、今後どうなるのかしら。