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はじめに
本記事は、コミュニティ活動を経て自身が得られた知見をもとに、DX Criteria(ディーエックス クライテリア)*1の存在をまだご存じない方や活用が十分に出来ていないと感じられている方へのヒントになればと思い書き記すものです。
*1:本記事では以降、略称としてDXCと呼称します。
説明責任とは
本記事で扱いたい「説明責任」は以下の引用の中でも、意義を説明する義務・責任を指しています。
研究に限らず一般的に意義の説明が必要とされているのは、許諾して良い権限を持つ者に対して、何らかのアイデア(*2)を実行に移したいと考える起案者から説明する流れかと思います。
*2:何かを買いたい/使いたい/作りたい、プロセスを変えたい 等
~Wikipedia 説明責任[1] より引用~
説明責任(せつめいせきにん)または答責性(とうせきせい)並びにアカウンタビリティー(英語: accountability)とは、政府・企業・団体・政治家・官僚などの、社会に影響力を及ぼす組織で権限を行使する者が、株主や従業者(従業員)や国民といった直接的関係者だけでなく、消費者、取引業者、銀行、地域住民など、間接的関係を持つ全ての人・組織(利害関係者/ステークホルダー; 英: stakeholder)にその活動や権限行使の予定、内容、結果等の報告をする必要があるとする考えをいう。
~アカウンタビリティー weblio辞書 デジタル大辞泉[2] より引用~
1 説明の義務・責任。
2 政府や公務員が政策やその執行について国民の納得できるように説明する義務をもつこと。説明責任。
3 企業が出資者から委託された資金を適正に運用して保全し、その状況を出資者に報告する義務をもつこと。会計責任。
4 多額の資金援助を受ける科学技術研究者は、その研究の意義を説明する義務・責任を負うとする考え方。
説明責任を逆転させるとは
※写真は日本CTO協会の会員限定イベントThanksgivingDay2024で配布されたものです。
DXCのポイント5:自己診断と市場比較の中に『「説明責任の向き」の反転』があります。
「逆転させる」とは、この向きの反転をもう少しキャッチーな表現に変えただけで同じ意味を指しています。
つまり言いたいこととしてはDXCを用いて、DXCの中にリストアップされている項目(クライテリア)に共感しやってみたい項目があった際に、"何故やるのか"の意義を起案者が説明するのでは無く、推奨されている項目を"何故やらないのか"を権限保持者に説明してもらう(ように促し働きかける)という事です。
これの良い点としては、権限保持者が項目の存在や内容や確からしさをただ知らないだけだった際には「特別な理由は無かったので試して良い」とすぐに了承を得られる場合があることです。
※更にはもし特別な理由があって止めていた場合には、その理由が知れて納得感が醸成されたり、別の筋が良さそうな項目に考えを移せる機会が得られることもあります。
タイトル回収および本旨としては以上で言い切った感があるのですが、補足が知りたい方は以降も引き続きご覧ください。
自己紹介
わたしは、合同会社DMM.comで二次元事業のエンジニアリングマネジメントに携わっています。
22年秋に開催されたThanksGivingDay2022に参加したことをキッカケに、23年1月から日本CTO協会のプロボノに加入し、同年2月からDXC-WG(ワーキンググループ)に参画させて頂き25年6月現在も活動しています。
DXC-WGでの約2年半では、解説文・フロントエンド版・DXCアップデート・生成AI活用インタビューのそれぞれの一部タスクを担当しました。
また日本CTO協会が主催するDXCに関する勉強会イベントにも運営スタッフとして3回ほど参加しています。
私の推しクライテリア3選
3つの共通点としては「不変的な本質であること」と「継続性」だと考えており、「AIに代替されづらいこと」も特徴です。
不変的な本質
最初、意図して選んだ訳では無かったのですが改めて確認したところ、この3つはDXCバージョンの変更点に記載されていない項目でした(つまり少なくとも約5年は変わっていないということ)。
最新動向に合わせて適宜アップデートされている中で変わっていないということは、より本質度合いが高いと理解しています。
継続性
1度できたから終わりではなく、常に実施している状態を維持する必要があるということです。
この性質はこの3つのみに限ってはおらず、むしろほぼ全ての項目に言えることではあるのですが、この「継続性」を意識し始めると1度だけアセスメントシートを実施してみるだけでは効果が限りなく少ないことに気づき易いと感じています。
AIに代替されづらい
重要マイルストーンの設定・ビジネスオーナーとの合意・コミュニケーションの透明性向上などは、人の意思が必ず介在するため、完全にAIに置き換えることが難しい領域です。
何らかのAI補助は受けつつも「自分達で動かないといけない」と気を引き締めるために活用できると思います。
TEAM-5-5:透明性ある目標管理
ビジネス上、重要なマイルストーンとそのスケジュールをチームで常に共有し、その進捗を確認しているか。
クライテリア詳細:https://dxcriteria.cto-a.org/30c3262520504a1695466fffde7d8c1a
クライテリアを含む解説文:https://dxcriteria.cto-a.org/c5d5a50f23414c9789bf1ee94c75d386
個人的な推しポイント
主要な目標を関わる全員で把握し追跡することは、ビジネスを成功に導いてくれます。
その他の参考
DXCの導入ガイド:エンジニアリングマネージャーの「まずとりかかりたい最初の10個」にも挙げられていました。
SYSTEM-7-1:システムモニタリング
SLI/SLO/エラーバジェットがビジネスオーナーとエンジニアが協議して合意の上設定され、計測されているか。
クライテリア詳細:https://dxcriteria.cto-a.org/dace7ed307824140b1c4e13241867c41
クライテリアを含む解説文:https://dxcriteria.cto-a.org/59a613777cd24763aba08ec36dfd5004
個人的な推しポイント
失敗を完全にゼロにしようとすると多大なるコストがかかりますが、計測・可視化・合意がなされていないと何か不具合が起きた時に印象のみで語られてしまうことがあるので、防止することができます。
CORPORATE-3-2:コミュニケーションツール
ここ1年以内に管理職以上で、「コミュニケーションの透明性向上」を目的とした対策を検討し実施したか。
クライテリア詳細:https://dxcriteria.cto-a.org/b5ef80173e9c4fd1aefd8e1c76fe927d
クライテリアを含む解説文:https://dxcriteria.cto-a.org/a70df996a2f74d10aac672391611ae6f
個人的な推しポイント
コミュニケーションの透明性は、情報へのアクセス権限の考え方にも繋がるため、Slack等のチャットツールのみに留まらない奥深さがあります。
その他の参考
DXCの導入ガイド:DXを進めたい経営層の「まずとりかかりたい最初の10個」にも挙げられていました。
DXCの導入ガイド:大手事業会社向けDXC導入ガイドラインの「DXC導入初級編」にも挙げられていました。
DXCの構造と観点について
詳しいDXCの全体構造を先に把握されたい方は「4. DX Criteriaの構造」のページをご覧頂ければと思うのですが、DXCのチェックリストは大きく4つの観点が分けられています。
※上述、いずれかのクライテリア詳細ページをご覧になられた方は、その中の「PointOfView」に該当する部分のことです。
本記事では4つの内、もしかしたら最初は分かりづらいかも知れない2つについて補足したいと思います。
プラクティスについての理解
~DXCの構造[3] 観点とチェックリスト:プラクティスと習慣(3つ) より引用~
デジタル化の進んだ企業群では当たり前に行われる習慣や実践手法が行われているかを確認する。
経営数値に見えにくい文化レベルの成熟をとらえるためにチェックする。
平易に表現すると「簡単では無いが、やったほうが良いこと」です。
自己診断する際に用いるアセスメントシートでは、ゼロかイチかで評価することが難しい際の表現も工夫されています。
条件付きでyes(またはno)とする場合には、その条件をいつまでにどのように解消できるかを議論できることが望ましいです。
アンチパターンについての理解
~DXCの構造[3] 観点とチェックリスト:アンチパターン(3つ) より引用~
デジタル化が進む過程で減っていく慣習的行動をチェックする。逆指標として用いる。
古い常識によって生まれていることであり、組織的なアンラーニングが行われているかを確認する。
平易に表現すると「陥りがちな罠」です。
これには昔は良いとされていた習慣なども含むため、先進企業の事例を元に見直された内容をご存じない場合、良かれと思って継続していることがあるため注意すべき項目です。
ただし、どんな状況においてもダメだと否定するものではなく属する業界や求められるプロダクトのセキュリティ等のレベルによっては適用しない方が良いこともあるはずなので、関係者の中で是非を議論されることが重要です。
座右のリストとしてのクライテリア
アセスメントシートを用いてスコアを出してみるのは健康診断として良いことなのですが、次のアクションに繋げるための診断とされるのが望ましいです。
そして現実の健康診断とは異なる考え方として、1つ1つのクライテリアを元にチーム内で議論することこそが、DXCの有効な使い方となります。
その際、全ての項目を一律に扱い続けるのは厳しいとも思いますので、それぞれのチームが定点観測したい推しクライテリアを定めて、座右に置きつつ意識するのはいかがでしょうか?
番外:ワーキンググループ活動の魅力
私のDXC-WGへの参加経緯は自己紹介の通りなのですが、DXCに限らず他のWGにも多数参加されている方々がいらっしゃいます。
それぞれ参加されるモチベーションは異なると思いますが「何か1つでも出来ることがあれば」と考えて行動されている方が多い印象です。
この「出来ること」は高度な専門性である必要は無く、実は普段の業務や属している業界では当たり前だと思っていることが、重宝されたりします。
頻度もそれぞれが持続可能なペースで参加されているため、すぐに目に見える成果を求めたい人には合わないかも知れませんが、中長期的に学習されたい人にとっては凄く良い環境だと感じています。
おわりに
この記事が何らかのヒントになれていましたら幸いです。