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伯耆大山と宿坊の風景

鳥取県の秀峰、大山、大神山神社、大山寺や桝水高原、鏡ヶ成、烏ヶ山を5たび訪れた写真紀行。
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大山の紅葉を撮る。・・・2001年10月27日(土)
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大山と秋桜 大山と稲藁 大山と収穫後の田
 ’01年10月27日(土)、私はこの年の秋、またしても大山を訪れた。朝8時30分に自宅を出ると、中国道、米子道を乗り継いで、溝口ICに降り立ったのは2時間後の10時30分だった。
 インターに降り立つと秀峰大山は間近に出迎えてくれた。およそ5ヶ月ぶりの再会である。しばらく見ないうちに大山は随分変化していた。6月はみずみずしい新緑をまとった大山だったが今は艶やかに色づいて美しくなっていた。そして見上げる大山の頂上に雲ひとつなく、紅葉の秋に相応しい行楽日和だった。大山の山懐に広がる田園一帯は稲作の他、大山名物、蕎麦(そば)の栽培も見られる。すでに収穫が終わっていてあたりに人影はない。もの静かな晩秋を感じさせる佇ずまいは感傷の秋という形容がぴったりである。
 私は大山がより美しく見えるビューポイントをそれほど知らないが、溝口インターを出たすぐ近くのバス停には大きな駐車場があって、ここから見る大山は富士山のようなコニーデ状の美しい山容を見ることができる。そして溝口インターから大山山麓に入るときは必ずここから何枚か撮ることにしている。今回は晩秋のちょっぴり寂しい雰囲気を表現してみたかった。大山の遠景を撮るときは前景に残り柿、花、ススキなどを入れると写真に奥行きが出るだろう。前景に入れる被写体が小さい場合は出来るだけ被写体に近づいて撮る方がボリューム感がでる。写真「大山と収穫後の田」は奥行きが感じられないのがお解り戴けるだろう。秋桜や収穫の終わった稲藁や稲木組みを前景に入れて撮ってみたが構図はこんなものかと自己満足している。趣味とは自己満足が無ければやってられない世界なのである。

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桝水高原と大山 大山おこわ定食 大山おこわ
レストランまつおか
 小一時間ほど写真を撮っただろうか、正面に大山を見ながら10分ほど車で移動すると桝水高原に出た。紅葉の綺麗なこの季節、桝水高原は行楽に訪れる人が多い。鏡ヶ成方面から来た車と入り交じってノロノロと渋滞が始まる。そして桝水原駐車場は本日無料だ。料金をとれば儲かるだろうに。しかし、敢えて無料にする理由は路肩に停める違法駐車を少なくして渋滞を防止する為だろうか???。だとしたら粋な計らいである。それでもそんな計らいがわからないで路肩に駐車する車も多い。それ故に気を許して歩けないのが残念である。紅葉を見て、小鳥のさえずりに耳を澄ませ、ぶらりのんびり歩きたいのである。
大山周辺の地図
 駐車場から桝水原に出た。なだらかな斜面が広がる草原状の山麓は行楽の秋を楽しむ家族連れで賑わい、楽しい歓声が飛び交う。お弁当を広げる人、散策を楽しむ人、寝そべって休息をとる人、思い思いの紅葉の秋を楽しんでいる。こんな長閑(のぞか)な青空の下(もと)で親しい仲間とお弁当を広げてくつろげるなんて最高の贅沢であると思う。人間社会のお付き合いも時には煩わしいと思うこともあるが、親しい仲間が集まって大勢でワイワイやるのも楽しい。みんな命の洗濯に来ているんだろうなどとしばしもの想いにふける。撮影は行楽客が写角に入らないポイントを選び、予めイメージしていた構図で何枚か撮影をしたあと、
土産物屋の2階にあるレストラン「まつおか」で昼食を摂ることにした。すでに先客が何人かあってほとんどの客は「まつおか」の名物、大山おこわ定食を食べている。私も迷わず大山おこわ定食にした。季節の山の恵み、栗やキノコに鶏肉などの具をふんだんに使った名物大山おこわ定食は1100円である。それに「大山そば」がついているのは流石にそば処であるし、二つの味がが同時に賞味できるのが嬉しい。
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山麓の原生林 山麓の原生林 大山鳥瞰図
 桝水原をあとにして、大山寺橋方面へ向かった。途中、小鳥の路(みち)と呼ばれるあたりは原生林の美しい樹間を抜けて道路がついている。クヌギ、楢、ナナカマドなどの白い樹皮と黄色や赤の落葉樹が織りなす風景は何とも美しすぎてどう表現していいかわからない。 しかし急激な冷え込みがないからだろうか?温暖化の影響だろうか?。今年の紅葉は数年前に見た艶やかさはない。それでも十分に美しい風景と認めざるを得ないのは、雄大な原生林そのものの美しさとの相乗効果だろうか?
林の中は樹間を透かして遠くまで見えるため、木立の並びが美しく、視線を上に向けると色づいた葉っぱが光に透けてキラキラ輝いてため息が漏れる。自然が織りなす四季の変化を人はそれぞれの感性で感じ取る。萌え出る新緑は、生き生きとした生命の躍動を感じさせてくれるし、清楚に咲く高山植物も短い夏を懸命に生きている悲壮感を感じさせてくれる。実りの秋、錦繍の秋、感傷の秋、日の入りが早くうすら寒い山間(やまあい)の晩秋。やがて訪れる厳しい冬を前にして想うこと、それは春から冬までのサイクルが人の栄枯盛衰の移り変わりに似ている。ひらひら舞い落ちる葉っぱを見ると自分の人生とだぶってくる。人は誰でも年老いて衰えて行くものであるが、それを想うとやるせなさ、寂しさ、そんな感傷的な気持ちに落ち込んでいく。人々を魅了する美しい紅葉も冬の訪れとともに葉っぱを落とし冬の永い眠りにつく。それを思うとやっぱり秋は寂しい。感傷の秋と言われる所以(ゆえん)だろうか。感性そのままを文章で表現することは難しいが写真で表現することはもっと難しい。
 今回は車で移動しているが、数年前は桝水原に車を置いて大山寺橋まで歩いた。時間が許すならここは紅葉樹の林に入り込んで美味しい空気を胸いっぱい吸い、自然に触れながら歩くのがいい。ゆっくり歩けば大山寺橋まで30分はかかる。歩くことにより自然がより近く見えるし、いままで見えなかった発見や新たな心のときめきが有ることだろう。
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大山寺橋から桝水原方面を見る 大山寺橋から参道方向を見る 大山寺橋から北壁を見る
 紅葉のトンネルを楽しみながら走ると暫くして大山寺橋に出る。橋上は佐田川上流方向に大山北壁や三枯峰が見え、その懐に広葉樹の原生林が広がる雄大な眺めが良い。また橋を渡りきった右手の土産物屋横には観光バスが立ち寄るため、沢山の人でにぎわう。北壁を背景にして記念写真を取り合ったり、おみやげ物を見たり、楽しそうだ。団体行動ではワイワイやるのが楽しい。
 土産物屋から少し歩くと宿坊が並び、修験道の山の雰囲気が漂う。大山は平安時代から山岳仏教の聖地として崇められてきた修験道の行場なのである。
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橋上から三枯峰を見る 博労座から大山北壁を見る 大山寺の紅葉
大山寺周辺の地図
 橋を渡ってまっすぐに100m程進むと大山寺参道に突き当たる。右に直角に曲がると大山寺へ、左に曲がれば博労座へ出る。博労座は志賀直哉の小説「暗夜行路」の終章あたりで伯楽(ばくろ)と言う表現で登場する。博労(伯楽)とは牛馬の売り買いを周旋する職業のことであって、ここでは牛馬およそ1万頭が市売りに掛けられていたことからついた土地の名前である。
 大山と暗夜行路の関わりは、志賀直哉が父親との不和を嫌って松山や大山で独り暮らしをした生活経験が名作の中に息づいているものと思っている。
 参道の両脇には宿坊、土産物屋が軒を連ね、石を敷き詰めて整備された参道はゆったりとした勾配で大山寺へ続く。大山寺まで歩くとおよそ数百mあるが杉木立や広葉樹の四季折々の変化を楽しむには絶好の散策ポイントである。参道を歩いていると登山を目的に来た人が目に付く。ここは蓮淨院横の夏山登山道とともに伯耆富士、大山への登山口でもある。 大山寺拝観料は300円で大山寺宝物館「霊寶閣」の入場券と共通になっているので、参道途中にある霊寶閣にもぜひ立ち寄りたい。中には銅造十一面観音立像など重要文化財が多数展示されていて開山から1300年の歴史を垣間(かいま)見ることが出来る。
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大山寺境内の紅葉 周辺案内板(拡大できます) 大山寺の案内板(拡大)
 大山へのアクセスは決して良いとは言えないため、ほとんどはマイカーで移動する。駐車場は博労座に大きな駐車場があり、1日400円で停められる。大山寺まで少し遠くなるが私は日頃の運動不足を補うために車は目的地から少し遠目に置くように心掛けている。また、駐車場から上がると参道の入り口に周辺案内板(画像クリック)が立っていて見どころや位置、方角関係のチェックが出来る。
 参道は中国産の御影石を敷き詰め、電柱などが撤去されているため、下からまっすぐに伸びた参道の坂道はなかなかすっきりした景観を楽しめる。
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博労座駐車場 博労座から大山北壁を見る 大山寺参道の坂道

 大山寺の山門の前から左方向に大鳥居があってその向こうに自然石を敷き詰めた参道が伸びている。この道は大神山神社奥宮へ通じる参道である。入り口前には暗夜行路の碑が建っている。志賀直哉の小説は短編物が多く、長編は「暗夜行路」一作しか無いと言われている。大山との関わりは、父親との不和を嫌って尾道での自炊生活、松江や大山での独り暮らしにあり、その生活経験がなければ小説「暗夜行路」の尾道や大山の名場面は生まれてこなかったと言われている。碑に刻まれた文字を見ると、「志賀直哉(明治16年〜昭和46年)は大正3年7月、当時の宿坊蓮浄院に滞在した。長編小説「暗夜行路」の終章はこの時の体験をもとにして書かれている」となっていた。
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大神山神社奥宮参道 大神山神社奥宮参道 大神山神社山門
 自然石を敷き詰めた参道は日本で一番長い石畳の道なのだそうで、苔むした石は開山された奈良朝時代からの物なのだろうか?。参道は杉木立や広葉樹に囲まれ、秋の柔らかい木漏れ日が差し込みむ中、森林の美味しい空気を味わう。暫く歩き続けるとやがて山門にたどり着く。10月下旬といってもここまで登ってくると少し汗ばんでくる。山門の入り口横にある手水鉢(ちょうずばち)では、大山のブナの林から湧き出る美味しい水で渇いた喉を潤す。手を清め山門をくぐり抜けたあと、急峻な石段の前に立って前方を見上げるとその向こうに立派な社殿がデンと立っている。
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下山神社 大神山神社社殿 大神山神社から大山行者道
 長い石段を登り詰めると下から見上げる大神山神社奥宮とは違ってその大きさは別格。社殿は重要文化財に指定され、1802年の建築で日本最大級の権現造り、内部は色彩豊かに長大な柱や長押(なげし)の白檀塗は日本一と言われている。主祭神は大己貴命(おおなむちのみこと)。
 大山は太古の昔より大己貴命が鎮座する山として大神岳または大神山と呼ばれていた。奈良朝時代、修験道、仏教が入り神仏習合説のもと大神に大智明権現を奉り、平安朝時代は三院百八十坊、雑兵三千の隆盛を誇る霊山であった。明治の神仏分離令により大神山神社となって、元のように純然たる神社となったのである。
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大山行者道 賽の河原の紅葉 賽の河原堰堤の紅葉
 大神山神社境内を右にまわると大山の行者道が木立を分け入るように伸びている。両脇にクマ笹が生い茂り、杉の大木がそそり立つ。その樹間を埋めるようにブナ、ナナカマド、ナラなどの落葉樹が茂る。この道は大堰堤を過ぎて暫くして夏山登山道6合目と合流する。弥山頂上を目指す人、展望の開ける6合目まで撮影を目的に登る人、この季節は人通りも多い。弥山頂上まで2.9km、歩行時間は2時間程度かかる。
 大神山神社を下ると山門を過ぎて暫くした左手に、賽の河原に降りる道がある。僅か数十メートル歩くと水気のない砂防ダムに出る。その上流部に見える大山北壁とそれを取り巻く広葉樹の林はなかなかの絶景を呈している。河原に降りて無邪気に水と戯れるも良し、堰堤上から記念の1枚を撮るのも良しピクニックに来たのならお弁当を広げるのにも絶好のお勧めポイントである。
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奥大山スキー場から南壁を見る 鬼女台から見た烏ヶ山 鬼女台のススキの風景
 帰りのコースは桝水原から一ノ沢、二の沢にまわり、奥大山から鏡ヶ成を経て蒜山高原に出た。途中鬼女台(きめんだい)に展望の開けた高台があって、そこの展望駐車場にあがると烏ヶ山や大山南壁や山並みの眺望がすばらしい。夕方になると逆光になるので写真を撮るとシルエットになりやすい。太陽が十分高い時間帯を選んで撮影するのがよい。後方にまわって蒜山の方向を見るとススキが高台の斜面を銀色に染めていた。蒜山高原を遠望するとその手前に紅葉の林が遙か向こうまで続く。
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鬼女台から蒜山方向を見た紅葉 蒜山牧場の風景 白樺の林
 蒜山牧場に到着すると陽は山に沈み、一日の終焉が間近だった。高原は白樺の林が美しい。男性的で岩肌むき出しの大山南壁となだらかな草原が広がる女性的な蒜山高原は対照的である。時間をゆっくりとって広い草原をのんびり歩けば気づいていない蒜山の良さが発見できるだろう。蒜山高原センターはお食事、お土産物を吟味する観光客でいつも盛況である。
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蒜山牧場の風景 蒜山高原センター玄関 蒜山高原センター
 

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