AIロボット協会テックブログをはじめます
AIRoAテックブログをはじめます
AIRoAとは
はじめまして、一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)です。
テックブログをはじめます!
AIRoAは、AIとロボット技術の融合を通じて、ロボットがより多くの分野で活躍する社会を実現することを目指す非営利団体として、2024年12月に設立されました。2025年3月7日のプレスリリースでも発表させていただきましたが、2025年度よりその活動を本格化し、産業の垣根を超えたオープンかつ大規模なデータ収集と基盤モデルの開発・公開を推進しています。
一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)AI×ロボット分野で、ロボットデータエコシステム構築を目指し活動を開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000158322.html
ロボットデータエコシステムの構築
現在、AI技術は大規模言語モデル(LLM)や視覚言語モデル(VLM)といった基盤モデルを中心に急速に進化しています。この基盤モデルの開発潮流はロボティクス分野に波及し、Physical AIやEmbodied AIといった新たな研究領域が注目を集めています。
しかし、市場にはこのような大規模データを共有・活用できる枠組みが十分に整備されておらず、各企業や研究機関が個別にデータを扱うことで開発効率が上がりにくい状況が続いているのが現状です。
そこでAIRoAは、以下の3つの柱となる活動を通じて、AIとロボット技術の融合による大規模なロボットデータエコシステムの構築を目指します。
- 標準機によるロボット制御のオープンデータセットの構築・学習済みモデルの検証
- オープンデータセットに基づくロボット基盤モデルの構築方法の調査
- ロボット基盤モデルに最適なソフトウェアプラットフォームの設計手法に関する調査
これらの活動を通じて、スタートアップや研究機関の支援・連携促進を図り、グローバルなロボットデータエコシステムの構築を推進します。
AIを用いた汎用ロボット開発加速に向けた学習向けのロボット動作データセットの構築および
ロボット基盤モデルへの応用可能性への検証についての調査
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/geniac/selection_data_3/plans/plan_AIRoA.pdf
ロボット基盤モデル開発の取り組み - ロボット基盤コンペティション
上記3つの柱のうち、2番目の「オープンデータセットに基づくロボット基盤モデルの構築方法の調査」を効果的に推進するため、AIRoAでは「ロボット基盤コンペティション」を実施しています。これは、多様なアプローチを並行して検証することで、最適な基盤モデル構築手法を見出すことを目的とした取り組みです。
参画企業・研究機関をはじめとする有志メンバーを募り6つのテーマごとに研究グループで、それぞれが異なるアプローチで汎用的なロボット基盤モデルの開発に挑戦しています。
一般社団法人AIロボット協会(AIRoA) ロボット基盤モデル開発コンペ開催決定
https://www.airoa.org/ja/recruitment-1
6つの研究テーマとグループリーダーからの意気込み
各グループは以下のテーマで汎用的な基盤モデルの作成に取り組んでいます。
グループ1. シミュレーションと強化学習によるfinetuning
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取り組み概要
- 実世界で人間が操作したデータセットによって事前学習されたモデルをシミュレーションを活用し強化学習によって事後学習させる
- 人間が操作したデータにはないリカバリー動作や、汎化性能の向上を目指す
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グループリーダーからの意気込み
- 現在大規模言語モデルでは強化学習による事後学習の有効性が示されてきております。また、ロボットにとって重要なフィーバックやリカバリーの動作を学習させるためには成功した動作だけでなく、様々な状況での経験を用いた学習が重要になると考えております。今回強化学習によってどれだけ性能が上がるかを検証します。
グループ2. 階層型VLA
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取り組み概要
- サブタスクを推定しTask planningを行えるような階層型VLAの構築
- 人やロボットのデータからLatent Action/Skillを学習し組み込むことで精度の向上を目指す
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グループリーダーからの意気込み
- チーム全体でVLAに関する知見を蓄積しつつ、人やロボットのデータから抽出したAction/Skillの潜在空間の組み込みやサブタスクの予測などを試すことによって性能の向上を目指します
グループ3. ロボット基盤モデルへの制御学習手法適応
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取り組み概要
- 強化学習など制御学習で培われた技術を基盤モデルに統合
- 力覚情報も含めた多様なモダリティへの対応を研究
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グループリーダーからの意気込み
- 人間は力覚・触覚情報を用いて物体の物理的性質を推定しながら物体を操作します。テーマ3では、力覚情報を活用することで、VLAの性能が向上することを検証します。
グループ4. 世界モデルに基づく柔軟なロボット制御
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取り組み概要
- 大規模な動画生成AIのように世界の全てを学習するのではなく、解くべきタスクに応じて環境を抽象化し、必要な予測のみを行う世界モデルを学習することで、低コストかつ汎用的な行動生成モデルの構築を目指す。
- コンペに限定されず、本質的な知能研究を見据えた基盤モデルの開発。
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グループリーダーからの意気込み
- 本グループは、もちろんコンペでの優勝を目指しますが、それと同時に本コンペを実世界で動作する本質的な知能の実現の前段階と位置付けて、今後の研究開発に繋げていきたいと思っています。
グループ5. 言語モデルとロボット基盤モデルの接続
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取り組み概要
- ロボット基盤モデルには、大規模言語モデル・視覚言語モデルと似た部分も異なる部分もあります。基本的なアーキテクチャや事前に取得したデータを使って学習させるところは似ていますが、ロボットを動かせるほど高速にアクションを生成する箇所や、使用できるデータの規模や種類、多様性は大きく異なります。
- コンペに限定されず、本質的な知能研究を見据えて、データとアーキテクチャの両面から実世界知能に迫ります。
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グループリーダーからの意気込み
- 本グループは、言語、視覚(一人称視点動画)、動作の各データの特性を活かし、データとアーキテクチャの両面から実世界知能を目指します。
グループ6. マニピュレーション特化型基盤モデル
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取り組み概要
- 物体の把持・操作に特化した基盤モデルの開発
- 人間の手のような器用さを実現する技術の確立
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グループリーダーからの意気込み
- データの質に着目した戦略を取り込んだモデルを作ります.質の高いものと低いものをより分けて利用することでより効率的な学習を可能にし、よりスムーズな操作を行うVLAを目指します。
評価と実験環境
コンペティションでは、物理シミュレータのほか、HSR(Human Support Robot)などの実ロボットを使用し、様々なタスクでの成功率を評価しています。データ収集は人間によるテレオペレーションで行い、以下の情報を取得しています。
- 台車・関節の移動量
- ハンドカメラ・頭部カメラ映像
- 力覚センサー情報
人間のテレオペレーションによるデータ収集は、動作の質を担保しつつバリエーションを確保できるため、高品質な学習データの生成が可能となっています。
テックブログ開設の理由
AIRoAとしてテックブログを開始する理由は以下の3つです。
1. 技術情報の発信とコミュニティ形成
ロボット基盤モデルやPhysical AIは、まだ新しい分野であり、技術的な知見が限られています。私たちは、実際の開発現場で得られた技術的な知見、課題、解決策を積極的に共有することで、日本のAIロボティクス分野の技術レベル向上に貢献したいと考えています。
また、技術情報の発信を通じて、AIロボティクスに興味を持つエンジニア、研究者、企業のコミュニティを形成し、オープンな議論の場を提供していきます。
2. ロボットデータエコシステムの透明性確保
AIRoAが構築を目指すロボットデータエコシステムは、多くのステークホルダーが関わる大規模なプロジェクトです。その進捗、技術的な詳細、利用方法などを定期的に発信することで、透明性を確保し、より多くの方々に参画していただきやすい環境を整えていきます。
3. 日本発のグローバルスタンダードを目指して
製造業に強みを持ちかつ少子化が進む日本においては、ロボットの行動生成にLLM、特にTransformerモデルを用いたAIロボティクスの進化および対応領域の拡大が不可欠です。私たちは、日本の強みを活かしたロボットデータエコシステムを構築し、それをグローバルスタンダードとして世界に発信していきたいと考えています。
今後は英語版の記事も並行して公開し、グローバルな技術コミュニティとの連携を深めていく予定です。
今後の記事予定
ロボット基盤コンペティションの成果共有
現在進行中のロボット基盤コンペティションについて、以下のような記事を順次公開していく予定です。
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コンペティション詳細解説シリーズ
- 各グループの研究テーマ深掘り(全6回を予定)
- 評価指標と実機環境の詳細の解説
- ベースラインモデル(π0など)の解説
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技術解説シリーズ
- HSRを使った実験環境構築
- テレオペレーションによるデータ収集手法
- シミュレータ(IsaacSim)活用ノウハウ
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成果物公開シリーズ
- 開発したモデルのアーキテクチャの解説
- オープンソース化したコードの使い方の解説
その他の技術記事
- ロボティクス専門用語解説:機械学習・深層学習とロボティクスの違い、基本概念の整理
- 学習手法比較:模倣学習、強化学習、およびそのハイブリッド手法
一緒にエコシステムを作りませんか?
AIRoAは、AIとロボット技術の融合による革新的な未来を創造するため、以下のような方々を募集しています。
- 技術提供・共同研究: ロボットデータの収集・活用に関する技術をお持ちの企業・研究機関
- データ提供: ロボットの動作データ、センサーデータなどを提供いただける企業
- 活用パートナー: 開発した基盤モデルを活用したい企業・スタートアップ
AIロボットの開発促進のための取り組みとして、基盤モデル開発に必要なデータの収集・保管・管理・公開、開発コミュニティの運営などを行っています。
一般社団法人AIロボット協会(AIRoA) 採用・募集
https://www.airoa.org/ja/recruitment
詳細については、AIRoAウェブサイトをご覧いただき、お問い合わせください...!
まとめ
AIRoAテックブログ、初回ということでAIRoAの紹介、ロボット基盤コンペティション、そしてテックブログ開設の理由についてお話させていただきました。
私たちは、オープンな技術共有と協業を通じて、日本発のロボットデータエコシステムを構築し、AIロボティクスが当たり前に社会で活躍する未来を実現していきます。
今後、コンペティションの進捗や成果物、技術的な知見を定期的に発信して参りますので、ぜひフォローいただき、一緒にAIロボティクスの未来を創っていきましょう...!
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