Kiroの登場と最近のAIコーディングツールについて思うこと
きっかけ: Kiroのリリース
Oikonです。
2025年7月14日に、AIエディタKiro Preview版がリリースされました。アイコンがとても可愛いです。
このKiroの登場には、エンジニアから様々な反応がありました。
KiroはまだPreview版のため、現時点で評価を下すべきではないと思いますが、私が見ている限りだと反応はさまざまです。
- AmazonがAIエディタを出した!
- またVSCodeのフォークか
- 要件定義してくれるのがいい!
- Claude Codeで良くないか?
Kiroの登場は、個人的にAIコーディングツールについて改めて考えるきっかけになりました。この記事では以下のことをつらつら書きます。
- Kiro登場までのツール
- Kiroの登場と特徴
- 最近のAIコーディングツールについて思うこと
Kiro登場までのツール
IDE型 (GitHub Copilot, Cursor, Windsurfなど)
最近のAIコーディングツールは自然言語によるコード生成をサポートしています。その先駆けとなったのはGitHub Copilotです。2021年当時から主流だったVSCodeのプラグイン(拡張機能)として登場して以来、AIエディタを牽引しています。この時はあくまで、「IDEにコーディングをサポートするAIチャットが付く」という追加機能的存在でした。
2023~2024年にCursorとWindsurfが登場します。VSCodeのフォークのため、VSCodeユーザーも操作感にすぐ慣れることができました。またAI-Firstの思想のIDEとして人気を博しています。エディタ内でTabを押すことで、AIエージェントから提案されたコード補完を採用し、開発の効率化につながりました。
上記に挙げた以外にも様々なIDE型のAIコーディングツールが登場しています。その多くは「AIエージェントにコーディングをサポートしてもらう」という特徴があります。
CLI型 (Claude Code, Gemini CLIなど)
2025年7月時点では、Claude CodeやGemini CLIといったCLI型のAIコーディングツールが台頭してきました。Devinも2024年ごろに話題になっていましたが、料金的に手が出せない人が多かったです。
最近のCLI型は「AIエージェントが自律的にコーディングからテストまでしてくれる」という特徴があります。IDE型のGitHub CopilotやCursorがペアプログラミングをしていたのに対して、Claude CodeやGemini CLIはジュニアエンジニアにコーディングを頼んでいるという表現がしばしば用いられます。
AIモデルの性能が上がったことで、ある程度まとまった作業をAIコーディングツールに任せられるようになりました。
Kiroの登場と特徴
2025年7月15日に、AIエディタKiro Preview版がリリースされました。VSCodeのフォークのため、IDE型に分類されます。
Kiroの特徴は、仕様駆動開発(Spec Driven Development)です。AIがコーディングを開始する前に「何を作るべきか」を明確に定義するアプローチです。
従来のAIコーディングツール(Cursor、Claude Codeなど)の課題として、個人〜小規模開発レベルであれば導入しやすいが、大規模開発レベルになるとプロジェクトや大量のコードベースをAIが理解しきれない問題がありました。また、Claude Codeのような自律駆動するコーディングAIエージェントは、いわばハンドルが利きにくい車のようなツールです。ガードレール的にルールやテストが必要なことが最近は指摘されることが多いです。
Kiroはこれらの課題を明らかに意識しています。
- スペック(Specs): 要件定義・技術設計・実装計画を立てる
- フック(Hooks): 特定のイベントで決められた作業を行う
- ステアリング(Steering): プロジェクト知識を永続的に与える
上記のKiroの主要な機能はどれも、中〜大規模でのソフトウェア開発の現場をターゲットにしているように思えます。KiroはAWS(Amazon Web Service)が出したということもあり、AIエージェントをプロジェクトでどうハンドリングするべきかの思想がよく表れていますね。
現在はプレビュー版ということもあり、使用可能モデルや実行速度の問題が指摘されていますが、正式リリースされた際には、企業を中心に使われるのではないでしょうか。特にAWSというプラットフォーマーが出している製品なので、流行る可能性は十分にあります。
最近のAIコーディングツールについて思うこと
最近のAIコーディングツールの特徴を紹介してきましたが、ここからはつらつらと最近のAIコーディングツールについて個人的に思うことを書きたいと思います。
- モデルプロバイダは立場が強い
- CLIツールは強い
- 開発規模によってAIコーディングツールの使い方は変わる
- AIモデルの性能が上がればコーディングも変わる
それぞれについて詳しく説明します。
モデルプロバイダは立場が強い
AIコーディングツールについて「モデルプロバイダは強い」と感じます。ここでいうモデルプロバイダは主に以下の企業が代表として挙げられるでしょう。
- OpenAI: GPT-4, o3など
- Anthropic: Claude 4 Opus, Claude 4 Sonnetなど
- Google: Gemini 2.5 Proなど
これらの企業は、自社サービスに自分たちのモデルを直接搭載でき、自社製品もそのモデルに合わせてチューニングが可能です。特にモデルプロバイダが強いと感じたのはClaude Codeで、Claude 4の性質に合わせてコーディングのためにかなり上手く設計されています。
CursorやWindfurfなどは上記のモデルプロバイダを選択もしくは複数組み合わせて提供できる強みはありますが、企業間の関係で提携を切られるような問題もあります。最近OpenAIがWindsurfを買収する噂が立った時には、Anthropicから提携を一時的に切られたことも記憶に新しいです(結局買収は実現しませんでしたが)。最近リリースされたKiroも、AmazonとAnthropicが提携しているためClaudeを使用しており、Anthropicに依存しています。
今後も先に挙げた3社を中心に、AIコーディングツールも変遷を遂げていくと考えられるでしょう。
CLIツールは強い
IDE型とCLI型のAIコーディングツールの話をしてきましたが、個人的にはCLIツールは以下の点で強いなと感じます。
- UIが開発の足枷にならない
- コマンドラインからIDEまで柔軟に組み込める
- WrapperやUtilityが作りやすく拡張性が高い
IDE型だとどうしてもユーザーインタフェースを作り込む必要があり、拡張性もそこまで高くありません。一方でCLI型は、ターミナルで実行するだけでなく、IDE統合も簡単に行えるため幅広いユーザー層が利用できます。またコマンドラインツール同士を繋げることもできるため、システムの中に組み込みやすいです。
AIモデルの性能が上がるにつれて、コーディング作業の過程を見ることが少なくなり、最終的なAIエージェントの成果物だけを評価すれば良くなったことも、CLIツールが台頭し始めた要因だと思います。
開発規模によってAIコーディングツールの使い方は変わる
Kiroの登場を通じて、個人的にAIコーディングツールの使い方は開発規模で大きく変わることを意識した方がいいと感じるようになりました。
個人開発から小規模開発くらいであれば、AIエージェントをガンガン働かせて複数の成果物を作成し、その中から一番いいものを選ぶような開発のマインドセットがいいと思います。最近はAPI従量課金では無く定額利用のAIコーディングツールも出てきているため、AIエージェントを使い倒すくらいの気持ちでいいです。
一方で中〜大規模の開発では、AIコーディングツールをぶん回しても思った通りの成果物が得られずに、結局手戻りが発生する問題が散見されます。これは現在のAIモデルが大きいプロジェクトのルールやコードを、コンテキストウィンドウに保持しきれず十分にプロジェクト全体を理解できないためです。このようなケースには、Kiroのような仕様駆動開発でAIエージェントのためのガードレールを整備した上で、AIコーディングツールを走らせる方が有効だと感じています。
AIモデルの性能が上がればコーディングも変わる
ここまでつらつらとAIコーディングツールの話をしてきましたが、個人的に頭にいつも入れておきたいと思うのは、「AIモデルの性能が上がればいつでも状況もガラッと変わりうる」ということです。たびたび引き合いに出すClaude Codeも、AIモデルの性能が低かったClaude 3.7の時代には自律駆動できても見向きもされませんでした。
また現在のAIモデルをコーディングに利用する時には、コンテキストウィンドウのサイズがしばしば問題になります。コンテキストウィンドウを汚染せず、いかにコンテキストを圧縮できるか、多くのエンジニアが日々工夫を凝らしていますが、この問題も将来的には解決される可能性が高いと思っています。
今後AIモデルは確実に進化していくので、その度にコーディングの手法を見直せるようにしておくことを心がけておいた方がいいです。
まとめ
最近はAIコーディングツールの種類が充実してきており、様々な開発のアプローチを取れるようになってきました。
今回ピックアップしたKiroだけでなく、この後はさらに進化したAIコーディングツールが出てくると思います。
その際にうまく使いこなせるよう、全体を俯瞰しつつ自分の用途にあったツールを選べるといいですね。
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