なぜ愛子天皇待望論は盛り上がるのか。武蔵大学社会学部教授の千田有紀さんは「それは、ジェンダーや性別をめぐる論争ではなく、『なぜ天皇家にお子さまがいらっしゃるのに、甥っ子に皇位を継がせなければならないのだろう』という素朴な庶民の感覚による疑問から生まれているのではないか」という――。
日本国会議事堂
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国会の議論は根本的な問題を先送りしている

秋篠宮家の悠仁さまが今年3月、成年会見を行われ、4月には筑波大学に進学された。映像などが公開されることで、悠仁さまのひととなりが少し見えてきたようにも思う。良いことである。個人的には、日ごろお聞きになる音楽なども関心があるし、記者からの質問にも答えていただきたかったようにも思うが。

一方で、衆参両院は各党派の代表者を集めて、安定的な皇位継承や皇族数確保などに関する全体会議を開催。ようやく、これまでの議論のとりまとめ案が提示されそうだ。旧皇族の男系男子を養子に迎える、旧宮家復帰案などが検討されているようだが、現状の皇位継承順位(第1位・秋篠宮さま、第2位・悠仁さま、など)をゆるがせにしないという方針をとりあえず立てたうえで、根本的な問題を次々と先送りしているようにも見え、皇室の将来にはかなりの不安を感じる。

かつて、保守派の言い分は「神武天皇のY遺伝子を継承されている悠仁さまの、男子継承をないがしろにしてはならない」というものであった。最近は「皇位継承は人気投票ではない」というようになってきている。国民の9割が女性の天皇を、つまりは愛子さまの皇位継承に好意的であるというような調査結果をみれば、いかにも古臭い「Y遺伝子が」という論理では国民を納得させられないと考えたのだろう。

おそらく“愛子天皇”待望論は、「女性だから皇位継承権がないのはおかしい」「皇位継承者を男系男子に限るという現状の制度は持続可能性に乏しい」といったジェンダー平等や性別をめぐる論争とは、違うところに争点があると思われる。