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フライ・ハーフ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

フライハーフ(fly half、略称FF)は、15人制ラグビーラグビーユニオン)において、先発出場の際に背番号10番の選手が担当するポジションである。日本スコットランドでは「スタンドオフ(stand off、略称SO)」と呼ぶなど、国(ラグビー協会)によって呼び名が異なる(後述)。

概要

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背番号9番「スクラムハーフ(scrum half)」と合わせて 2人の選手を、「ハーフ団」あるいは「ハーフバックス(half backs)」という。一般的に、スクラムや、モール、ラックからボールを取り出すのがスクラムハーフの役割である。そのスクラムハーフからボールをパスされる最初のポジションが、フライハーフ(スタンドオフ)となる。当然のことながら、戦術的に、その通りにしないことはある。

背番号10番は、一般的に「司令塔」と言われているポジションである[1]。ゴールキックも担当する選手が多く、その場合、チーム内でもっとも得点する機会が多い[1][2]

背番号10番の選手と交代して、フライハーフ(スタンドオフ)の位置・役割を行う選手は、他の背番号となる。

語源

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「フライ・ハーフ」の語源は、1878年にウェールズの首都カーディフで、ハーフバックスハーフ団)の1人にショートパスを送り、その選手がボールを持って突進するという戦術が考案されたことによる(現在では、10番の代表的戦術となった)。このハーフバックは「フライングハーフバック(flying half back)」と呼ばれ、やがてフライハーフ(fly half)に短縮された[3][4]

フライハーフと呼ぶ国(協会)

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ワールドラグビーランキングが上位に位置する国(協会)で、10番を「フライハーフ」と呼ぶのは、以下のとおり。比較的、広く使われているポジション名となっている。

  • 南アフリカ共和国[5]、ウェールズ[6]、イングランド[7]、フランス[8]、オーストラリア[9]、アメリカ合衆国[10]

他の名前で呼ぶ国(協会)

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10番を「フライハーフ」以外の名称で呼ぶ国(協会)は、ラグビーの強豪国であったり、すでにその名前が浸透していたり、また、それらの国(協会)が下記のようにさまざまに存在することから、10番の呼び名を世界的に統一しにくい現状がある。

日本・スコットランド

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日本スコットランドでは「スタンドオフ(stand off、略号SO)」と呼ぶ[11][12][13][14]ハーフ団(9番・10番)のうち、スクラムから より離れていることを意味する「stand off half」が語源となる[15]

アイルランド

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現在ワールドラグビー本部がある強豪国アイルランドでは「アウトハーフ(out half、略号OH)」と呼ぶ[16][17]ハーフ団(9番・10番)のうち、外側(スクラムから より離れている側)に位置しているという意味で、「stand off half」と同義となる[18][19]

ニュージーランド

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強豪国ニュージーランドでは「ファースト・ファイブエイス(first five-eighth、略号FF)」[20][21][22]と呼ぶ。「10番と12番」は5列目を意味する「5/8(八分の五)」=ファイブエイス(five eighth)といい、10番は その1番目であることから[23]。1903年、オールブラックスの初代キャプテン、ジミー・ダンカン(Jimmy Duncan)が、ファイブエイスにおける戦術と共に考案した名称である[24][25]

フィジー

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ラグビーを「国技」としている[26][27][28][29]太平洋諸国の強豪国フィジーでは、ニュージーランド同様に、5列目(10番と12番)のうち、10番を「5列目の1番目」として「ファースト・ファイブ(first five、略号FF)」と呼ぶ[30]。12番は「5列目の2番目」の意味で、セカンド・ファイブ(second five)と呼ぶ[30]

イタリア・アルゼンチン・スペイン

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英語圏ではないイタリア[31]、アルゼンチン[32]、スペイン[33][34]では、母国語としてのイタリア語やスペイン語を使って、10番のポジション名を呼ぶ。それら3つの国での綴りは同じで、発音もほぼ同じで「アペルトゥーラapertura)」という[31][32][33][34]。この言葉は、もともと「オープニング」「開始」などの意味である。

脚注

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  1. ^ a b スタンドオフ(SO)10番 – 教えて!ラガマルくん”. 2024年12月27日閲覧。
  2. ^ 成功率94%のキックだけじゃない! アルゼンチン戦のキーマン松田力也は司令塔としていかなるゲームプランを描いているのか?【ラグビーW杯】”. THE DIGEST. 2025年1月25日閲覧。
  3. ^ How did Rugby terminology come about”. www.angelfire.com. 2025年1月10日閲覧。
  4. ^ Rugby Football History”. www.rugbyfootballhistory.com. 2025年1月10日閲覧。
  5. ^ Springboks”. SA Rugby. 2025年1月9日閲覧。
  6. ^ Wales Senior Squad” (英語). Welsh Rugby Union | Wales & Regions. 2025年1月9日閲覧。
  7. ^ Senior Men | Rugby Football Union”. www.englandrugby.com. 2025年1月9日閲覧。
  8. ^ https://www.ffr.fr/equipe-de-france/rugby-a-xv/xv-de-france-masculin/joueurs” (フランス語). Fédération Française de Rugby. 2025年1月9日閲覧。
  9. ^ Wallabies Squad | Wallabies Rugby” (英語). wallabies.rugby. 2025年1月9日閲覧。
  10. ^ Men's Eagles | USA Eagles” (英語). eagles.rugby. 2025年1月9日閲覧。
  11. ^ Scotland Men Archives” (英語). Scottish Rugby. 2025年1月9日閲覧。
  12. ^ Adam Hastings” (英語). Scottish Rugby. 2025年1月10日閲覧。
  13. ^ Finn Russell” (英語). Scottish Rugby. 2025年1月10日閲覧。
  14. ^ Blair Kinghorn” (英語). Scottish Rugby. 2025年1月10日閲覧。
  15. ^ stand-off half - WordReference.com Dictionary of English” (英語). www.wordreference.com. 2025年1月11日閲覧。
  16. ^ Irish Rugby | Team” (英語). 2025年1月9日閲覧。
  17. ^ Irish Rugby | Out-Half Ioane Joins Connacht For 2024/25 Season” (英語). 2025年1月10日閲覧。
  18. ^ out half - WordReference.com Dictionary of English” (英語). www.wordreference.com. 2025年1月11日閲覧。
  19. ^ Dictionary.com | Meanings & Definitions of English Words” (英語). Dictionary.com. 2025年1月11日閲覧。
  20. ^ Damian McKenzie” (英語). allblacks.com (2024年11月25日). 2025年1月9日閲覧。
  21. ^ Beauden Barrett” (英語). allblacks.com (2024年11月18日). 2025年1月9日閲覧。
  22. ^ Harry Plummer” (英語). allblacks.com (2024年9月23日). 2025年1月9日閲覧。
  23. ^ Rugby Football History”. www.rugbyfootballhistory.com. 2025年1月10日閲覧。
  24. ^ When is a first five-eighths actually a number 10?”. ROAR. 2025年1月10日閲覧。
  25. ^ Meikle, Hayden (2011年9月26日). “Greatest moments in Otago sport - Number 42” (英語). Otago Daily Times Online News. 2025年1月10日閲覧。
  26. ^ Japanese News and Notices » Embassy of Japan in Fiji” (jp). www.fj.emb-japan.go.jp. 2025年2月13日閲覧。
  27. ^ 南国フィジーで人気のスポーツ交流 - フィジー留学のフリーバード|留学費用の安い国で語学留学”. フィジー留学のフリーバード|留学費用の安い国で語学留学 - (2020年8月23日). 2025年2月13日閲覧。
  28. ^ 国民の4人に1人がやってる!?フィジーでラグビーが人気の理由とは? - フィジー留学のフリーバード|留学費用の安い国で語学留学”. フィジー留学のフリーバード|留学費用の安い国で語学留学 - (2020年9月8日). 2025年2月13日閲覧。
  29. ^ フィジーの国技「ラグビー」強さの秘訣は?”. フィジー旅行・観光・留学情報 FIJIANWALKER. 2025年2月13日閲覧。
  30. ^ a b Developers, Oceanic. “Fijian Warriors” (英語). Official Website of Fiji Rugby Union. 2025年1月9日閲覧。
  31. ^ a b Team” (イタリア語). Federazione Italiana Rugby. 2025年1月9日閲覧。
  32. ^ a b Pumas para toda la vida - UAR” (スペイン語) (2023年5月13日). 2025年1月9日閲覧。
  33. ^ a b Jugadoras Selección XV Femenina” (スペイン語). Real Federación Española de Rugby - FERugby - Spanish Rugby Union. 2025年1月9日閲覧。
  34. ^ a b Masculino XV – ESPAÑA vs PORTUGAL (07/02/2021)”. FEDERACIÓN ESPAÑOLA DE RUGBY. p. 6. 2025年1月10日閲覧。

関連項目

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