P/2016 P5 (COIAS)
COIAS彗星[1] P/2016 P5 (COIAS) | |
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![]() | |
見かけの等級 (mv) | 24.1(発見時、zバンド)[2][3] |
分類 | 周期彗星(計算上)[4] |
発見 | |
発見日 | 2016年8月1日[2] |
発見者 | COIAS[3] (Come On! Impacting ASteroids) |
発見場所 | ハワイ・マウナケア すばる望遠鏡 ( ![]() |
発見方法 | ウェブ上の市民科学プロジェクト参加のボランティアによる目視検出[5] |
軌道要素と性質 元期:TDB 2457357.5 = 2015年12月1.0日[4] | |
軌道の種類 | 双曲線軌道[4] |
近日点距離 (q) | 4.426 au[4] (約6.64億 km) |
遠日点距離 (Q) | 4.979 au[4] |
離心率 (e) | 0.05885[4] |
公転周期 (P) | 10.197 年[4] (3724.757 日) |
軌道傾斜角 (i) | 7.036°[4] |
近日点引数 (ω) | 33.632°[4] |
昇交点黄経 (Ω) | 185.480°[4] |
平均近点角 (M) | 96.912°[4] |
前回近日点通過 | TDB 2460086.984[6] (2023年5月22日) |
最小交差距離 | 3.4222 au(地球軌道に対して)[4] 0.001344 au(木星軌道に対して)[4] |
物理的性質 | |
絶対等級 (H) | 8.0 ± 1.0(全光度)[4] |
■Template (■ノート ■解説) ■Project |
P/2016 P5 (COIAS)(COIAS彗星[1]、コイアス彗星[7])は、2016年に撮影された画像から、2025年に最初に発見されて報告・公表された彗星である[3][8][9]。
すばる望遠鏡が撮影したアーカイブ画像から太陽系小天体を探す日本の市民科学プロジェクトであるCOIAS[注釈 1]のユーザーによって発見された初めての周期彗星である[7]。
発見の経緯
[編集]2023年7月に公開されたウェブアプリケーション「COIAS」では、2014年から2021年にかけてすばる望遠鏡で行われたHSC戦略枠プログラム (HSC-SSP)で撮影され、データリリース(PDR3)として広く公開されている画像を使って、未発見の小惑星や彗星を捜索することができる[11][10]。
COIASで新天体を捜索していたユーザーの1人が、「COIASで解析した2016年7月3日と7月7日に撮影された画像に写っている天体に、彗星のような活動が見える」と2025年3月16日に、COIAS開発チーム代表の浦川聖太郞(日本スペースガード協会)に連絡した[12][13]。この天体は2016年8月1日に撮影された画像に写っていたところを既にCOIASにより発見されていたが、その際は彗星と気づかれず、小惑星候補として報告されていた[5]。その後、同年7月29日に撮影された画像にも彗星活動を見せるこの天体が検出された[2]。また、同年8月9日に撮影された画像にもこの天体が写っていたが、彗星活動は写っていなかった。浦川はこの天体の彗星状の外観やコマや尾の大きさ・長さについて3月17日に小惑星センター(MPC)に通報、報告した[5]。
報告後、この天体が彗星候補として小惑星センターのウェブサイト「PCCP (Possible Comet Confirmation Page) 」に掲載されると、公開されている世界中の天文台の画像などからプレカバリーと呼ばれる、撮影された画像に写っているも気づかれなかった観測がないかアマチュア・研究者によって捜索された。 ウェスタンオンタリオ大学のロバート・ワークは、ハワイ・マウイ島のハレアカラ山頂にある Pan-STARRS1 が2016年7月7日、10月30日、そして2015年7月から10月にかけて撮影した画像からこの天体を発見した[2]。特に、2015年の7月27日、7月28日、10月10日に撮影された画像ではコマが見えることを、浦川の報告の翌日である2025年3月18日にMPCに報告した。
アメリカ・カリフォルニア州シミバレー在住のアマチュア天文家サム・ディーン[14]は、2012年7月22日と2016年8月30日のすばる望遠鏡の画像、2013年7月28日にチリ・パラナル天文台にある口径 2.6m のVLT掃天望遠鏡(VST)からもこの天体を発見した。
さらに彼は、2012年から2016年にかけての出現の次の回帰に相当する2023年4月17日と4月23日にチリ・セロ・トロロ汎米天文台にある口径4mのビクター・M・ブランコ望遠鏡に搭載された DECam が撮影した画像からこの天体を検出した[5]。逆に、1つ前の回帰に相当する2004年6月23日にスペイン領カナリア諸島ラ・パルマ島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台にある口径 2.5m のアイザック・ニュートン望遠鏡が撮影した画像からもこの天体を検出した[5]。
こうして3回の回帰、6878日(18.83年)におよぶ観測期間から合計58件の観測データが集まり[6]、2025年3月21日に小惑星センターから小惑星電子回報 (MPEC) 2025-F40号にて発見が正式に公表され[2]、同日には国際天文学連合の天文電報中央局からのCBET5529号より発見がアナウンスされた[5]。
特徴
[編集]木星に何度も接近する木星族彗星・準ヒルダ群彗星で、円軌道に近い彗星としては珍しい軌道を持ち[15]、1979年から2165年にかけて木星に8回接近する[4]。 接近のたびに木星の重力により軌道が大きく変化し、サム・ディーンはこの彗星が元々木星軌道の外側を公転していたところを、1979年と1988年の接近を経て木星軌道の内側に入り込む現在の軌道になったと指摘している[16]。さらに彼は、2054年の接近ではさらに太陽系の内側に入り込むが、2080年代の接近で再び軌道長半径が大きくなると指摘している[16]。
国際天文学連合による彗星の命名ガイドラインでは、「ウェブ公開された画像から発見された彗星には、確立されたチームによる画像でない限り命名されない」との規則があるが[17]、P/2016 P5 には発見当初からCOIAS彗星と命名された。COIASから最初に発見された彗星であるC/2015 K7は当初名前がつかず、2025年4月になって事後的に命名されたため[18]、P/2016 P5 の公表時点ではP/2016 P5 が最初にCOIASの名前を冠した彗星となった。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 塚田健 (2 May 2025). "2025年6月号". 天文ガイド. 誠文堂新光社. p. 68.
- ^ a b c d e “MPEC 2025-F40 : COMET P/2016 P5 (COIAS)”. Minor Planet Electronic Circular (MPEC). Minor Planet Center (2025年3月21日). 2025年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月3日閲覧。
- ^ a b c 吉田誠一 (2025年3月22日). “コイアス彗星”. aerith.net. 吉田誠一のホームページ. 2025年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月3日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o “Small-Body Database Lookup: P/2016 P5 (COIAS)”. JPL Small-Body Database. Jet Propulsion Laboratory (2025-03-21 solution date). 2025年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月4日閲覧。
- ^ a b c d e f “Electronic Telegram No. 5529”. 天文電報中央局 (2025年3月21日). 2025年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月4日閲覧。
- ^ a b “P/2016 P5 (COIAS)”. 小惑星センター. 2025年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月4日閲覧。
- ^ “日本人が発見した彗星一覧”. 国立天文台 (2025年3月22日). 2025年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月22日閲覧。
- ^ “Comet P/2016 P5 (COIAS)”. COBS Comet OBServation database. 2025年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月4日閲覧。
- ^ a b 「市民900人、未確認の天体381個発見…地球防衛に「誰でも参加できるように」アプリ開発」『読売新聞』2024年4月4日。オリジナルの2025年3月6日時点におけるアーカイブ。2025年3月23日閲覧。
- ^ “用語解説集”. COIAS開発チーム. 2025年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月23日閲覧。
- ^ “P/2016 P5 (COIAS)”. コメットハンター関勉のホームページ (2025年3月28日). 2025年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月3日閲覧。
- ^ “周期彗星 P/2016 P5 (COIAS)の発見”. COIAS開発チーム (2025年3月22日). 2025年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月3日閲覧。
- ^ “Private investigator of Solar System bodies from California”. 2024年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月23日閲覧。
- ^ “COIAS で初の彗星発見!小惑星への命名も!!”. 国立天文台 (2025年4月23日). 2025年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月25日閲覧。
- ^ a b “H431154 on PCCP” (2025年3月21日). 2025年4月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月14日閲覧。
- ^ “IAU Comet-naming Guidelines”. 国際天文学連合. 2025年3月22日閲覧。
- ^ “April 5: Names Assigned to Three Currently-Unnamed Comets”. IAU: WG Small Bodies Nomenclature (WGSBN) (2025年4月5日). 2025年4月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月6日閲覧。