株式会社レアゾン・ホールディングスの田村と申します。この7月で、エンジニアとして実務に入ってちょうど1年になります。
僕はこの1年間、実務で様々なことを学んで成長しつつも、僕より遥かに膨大な知識量を持ち、遥かに速いスピードで成長していくAIを間近で見て、「エンジニアは何を目指せば良いんだろう?」「そもそも不要なのでは?」といった疑問をたびたび感じ、向き合ってきました。もちろん完全な答えなどはありませんが、これからエンジニアとしてのキャリアをスタートさせる誰かに、少しでも僕の考えや体験談が参考になればと思います。
これからのソフトウェアエンジニア
「AIがエンジニアの仕事を奪う」と言われていますが、実際はどうなのでしょうか。つい先日にもMicrosoftがSEを中心とした6,000人以上のレイオフを行うなど、確実にAI失業の波は来ていると思われますが、実際にどれくらいのスピードで、どのくらいの割合の仕事が奪われていくかはわかりません。
ただ、日々AIが進化を続けるこの時代、エンジニアに求められているスキルが変革している時代であることは確かです。
では、この時代の中で、我々「AIより弱いエンジニア」はどうすれば良いのでしょうか?
スキルがないからこそ、楽な道を選ぶな
AIを用いた開発というものに、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。人間が自然言語で指示を出し、あとはAIが勝手にコーディングを行い、テストを行い、エラーを解決してくれる。そんなイメージだとしたら、あながち間違いではないと思います。
僕も実体験としてありますが、最新のAIツールに丸投げする開発作業はとても楽です。頭を使わずに済みます。そして、新卒であるにもに関わらず大したものだと、周りから評価されたり、尊敬の眼差しを受けることもあります。
ですが、この快楽こそ、僕は新卒エンジニアが絶対に嵌まってはいけない落とし穴だと考えています。
「楽である」ということは、「誰でもできる」ことと密接に関係しています。「新卒の状態の皆さんができる」ということは、「大した経験や知識がなくともできる」ことを意味します。そういった職種は、希少性が低く、価値が下がっていきます。
「AIツールを使いこなすことも立派なスキルだ」という意見もあるかもしれませんが、完全には賛同しかねます。
ツールを使いこなすスキルというものは、一過性であることが多いです。現在もAIツールは日々進化しています。1年後にはまた別のツールが登場していることでしょうし、その際に「昔のツールに詳しかったこと」がどれほどアドバンテージになるかは疑問です。優れたツールが登場する度に学び直し続けるというのも選択肢の一つだとは思いますが、そのようなキャリアを魅力的だと感じる人はおそらく多くないでしょう。
また、AIツールに詳しくなることは、希少性としても高くないと考えられます。黎明期に限定すれば珍しいスキルかもしれませんが、時間が経てば、誰もが当たり前に使うようになるでしょう。2025年現在、採用面接でスキルを聞かれて「Google検索に慣れています」と答えるのは可笑しいと感じると思いますが、10年後の我々はそうならないようにしないといけません。若いからこそ、将来につながりづらいスキルを磨くのは悪手であると言えます。
自分の成長のためにAIを使い倒せ
AIと共同開発をする我々2025年のエンジニアは、「AIの指揮者」であり、「AIの成果物に対する責任者」です。それらの役割を担うエンジニアに必要なのは、幅広い理解です。
AIに的確な指示を出すためにも、AIの成果物が妥当だと確認するためにも、理解が必要です。
この「理解」というものは、AIの進化と関係なく存在するもので、かつ習得が難しいものです。つまりは希少性、ひいては価値につながります。
では、どうやって理解を深めていくのか。オススメは、AIでも人間でも良いので、理解のための質問をしまくることです。僕はAIに対して毎日50〜100回くらいの質問をすることが多いですが、その多くは、「どうしたらこれが実現できますか?」といった内容よりも、「このコードってどんな意味ですか?」「この構文は内部的にはどのような順序で処理が走っていますか?」といったような、自身の理解を深めるための質問です。
こういった理解は、もちろん短期的には成果に直接つながるものではありませんが、中長期的に見れば大きな力を発揮します。自分は実務に配属されてたった1年ですが、こういった理解のための姿勢が、現在のチームに対する貢献に大きく寄与していると肌で感じています。
新卒エンジニアは大抵何らかのプロジェクトにアサインされると思いますが、まずはそこのコードベースとそのプロジェクトのドメインをとことん理解できるように調べたり質問しまくってみてください。コードの内容の理解にとどまらず、どうしてこの設計なのか(他のより良い設計がないか)も突き詰めると理解が広がります。また、エンジニアの世界には、意味が広範だったり、何となくの理解で使ってしまいがちな単語(「プロセス」「ビルド」「イベント」など)が数多く登場するので、それらについてとことん調べてみるのもオススメです。
まとめ
AIによる激動の時代だからこそ、従来と同じようなやり方で業務に従事していてはダメなんだろうなと感じています。大変ですが、考えて前に進み続けることが、社会(少なくともエンジニア業界)では求められるんだろうなと思います。
この記事を見た、エンジニアを志す誰かの助けになれれば幸いです。